ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3304)

 『ちびまる子ちゃん』で学ぶ「教室内カースト」

 鈴木翔(著)『教室内(スクール)カースト』(光文社新書)を読んだ。

 学校に通っていた頃に感じていた人間関係のモヤモヤを明瞭に理解することができた。話題になっていた本だが、著者にセンスの良さを感じた。

 個人的な経験を振り返っても、学校の教室内で、生徒間の"ランク"や"上下関係"というのは、確かにあった。

 もちろん、明文化はされていなかったが、生徒は「上位グループ」「中位グループ」「下位グループ」「仲間外れ」という具合に分かれていた。

 クラスの中で、自分が「上位」「中位」「下位」のどこに位置するかは、小学校の高学年には、おおよそ決まってしまう。その時の「地位」は、どうやら、その後もあまり大きく変化しない。上位グループには明るい未来、下位グループには暗い未来が待ち受けている。

 さくらももこの有名な人気作品『ちびまる子ちゃん』のクラスメイトを例に考えてみよう。

 『ちびまる子ちゃん』では、「上位グループ」「中位グループ」「下位グループ」は結構明確に描かれている。

 ごく単純に言えば、大野君、杉山君、花輪君は「上位グループ」、丸尾君やハマジ、ブー太郎は「中位グループ」、藤木君や永沢君は「下位グループ」だ。案外、この序列のリアリティが、『ちびまる子ちゃん』の人気の秘密かもしれない。

 「上位グループ」の大野君、杉山君、花輪君は、おそらく今後、スポーツや恋愛を通して、人間的に成長する。

 教室内で、上位グループに属する生徒(『ちびまる子ちゃん』で言えば、大野君、杉山君、花輪君)には「リーダーとしての資質」があると考えられる。

 そして、小学校高学年から中学、高校にかけて、教室内でリーダーシップを発揮し、コミュニケーション能力を身に付ける。企業が欲しがるのは、こういう「上位グループ」だった生徒だ。

 大野君や杉山君のようなタイプは、おそらく将来、大手商社の営業マンなどになって、活躍することになる。

 一方、「下位グループ」の藤木君や永沢君は今後、おそらくいじめられ、女性にも無視され、世の中を逆恨みするようになる。

教室内で、下位グループに属する生徒(『ちびまる子ちゃん』で言えば、藤木君や永沢君)は、「既に終わっている」と考えられる。

 下位グループの生徒は、中学、高校にかけて、教室内で上位グループの機嫌を損ねないように萎縮するため、リーダーシップやコミュニケーション能力が身に付かない。

 そのため、藤木君や永沢君のようなタイプの生徒は、おそらく将来、就職活動に失敗して、ブラック企業で働くか、非正規雇用のワーキングプアになる。

 残酷だが、おそらく小学校高学年の時点で、上位グループにいたか、下位グループにいたかで、その後の人生が大きく分かれるような気がする。

 ちなみに、本書でも言及があるが、個人的印象では、男子の上位グループと女子の上位グループは、仲が良かった気がする。

 生徒の序列やランクに際して、「異性からの評価」が重要な役割を果たしていたのは、間違いないと思う。単純に言えば、「モテる人が偉い」のであり、これは実社会でもそのまま通用する。

 「モテる人が偉い」と言うと身も蓋もないが、人間も動物であり、自分の地位を定める上で、異性からの評価が重要な役割を果たす。

 そして、上位グループはスポーツと恋愛を通して人間的に成長するのに対して、下位グループはイジメと現実逃避で人間的に歪んでいく。

 『ちびまる子ちゃん』で言えば、大野君、杉山君、花輪君はリーダーの資質を持ち、快活な性格で女子にモテる。そのため、将来も有望だ。

 一方、藤木君や永沢君は、陰気で覇気がなく、女子にもモテない。そのため、将来は暗い。犯罪者や浮浪者に転落しても、不思議ではない。

 これを言うのは酷だが、10歳の頃、輝いていた人は、20歳、30歳の時点でも輝いている可能性が高い。

 一方、10歳の頃、あまり冴えない人は、20歳、30歳になっても、あまり冴えないままでいる可能性が高い。

 「下位グループ」の藤木君や永沢君が、「上位グループ」の大野君、杉山君、花輪君と逆転できるかと言えば、おそらくそれは難しい。持って生まれた才能や資質の差もあり、本人の努力だけでは、この差は超えられないのだ。

 山田宏哉記

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2013.10.20 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ