ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3310)

 タクシーに未来はあるか -業界復活の切り札-  

 先月、道端を歩いていると、タクシー運転手の愚痴が聞こえてきた。曰く「昨日は40人乗せて、最高金額が\1,600。嫌になっちゃうよ」。

 タクシー業界が構造不況に陥っているのは、国土交通省の統計でも確認できる。同省の統計によると、タクシーの輸送人員(利用客)は昭和45年(1970年)から、右肩下がりで減っている。

 1970年のタクシーの車輌数と輸送人員をそれぞれ100とすると、2008年の車輌数は125、輸送人員は47。要するに約40年でタクシー車輌は約25%増、輸送人員は約50%減となっている。
http://www.mlit.go.jp/common/00014769.pdf

 タクシーの輸送人員(=利用客)がこの40年で半減した理由は何か。

 最大の理由は「首都圏での公共交通機関の発達」だと思う。首都圏では「電車で行くのに不便な場所」がだんだん減ってきた。おそらく、それに伴い、タクシーの市場規模も縮小した。

 但し、その一方、タクシーの車輌(運転手)は増えてきた。

 その理由は、タクシー業界が「失業者の吸収先」だからだと思う。新卒でタクシー業界に就職を希望する学生は殆どいない。タクシー業界は、解雇や早期退職で職を失った人の再就職先という色彩が強い。

 ハッキリ言わせてもらうと、現状のタクシーの運賃は、高過ぎる。

 個人的には、タクシーに乗ると、「損したな」と感じることが多い。そもそも、タクシー料金は「人の足元を見た価格体系」になっている。終電を逃した人が主要顧客だし、電車で30分の距離でも、タクシーで帰宅すれば、平均的サラリーマンの日給が吹き飛ぶ。

 例えば、東京-横浜間を電車で移動すると、30分で\450となる。一方、深夜タクシーで移動すると、80分で\12,300にもなってしまう。

 日本のサラリーマンの平均年収は約500万円。1日あたりの稼ぎは、365日で割ると、\13,700。一生懸命残業して、終電を逃して、東京から横浜まで深夜タクシーに乗ると、料金\12,300で1日の稼ぎが吹き飛んでしまう。

 今のところ、タクシーは運賃が高過ぎるので、あまり国民生活の役に立っていない。

 また、大半の人が、タクシーに対して、あまり良い印象を持っていない。信号無視や速度違反、隊列駐車といった交通マナーの悪さ。終電を逃した人の足元を見て、電車の約30倍の運賃ときた。

 では、タクシー業界には、未来がないのか。僕は「それは違う」と思う。

 結論を言えば、タクシー業界復活の切り札は「自動運転技術による無人化」にある。

 タクシーの運転手は生身の人間がする必要はない。自動運転技術が普及したら、タクシーは自動運動に切り替え、運賃を引き下げるのが合理的だ。

 個人差はあると思うが、人間が運転するタクシーと自動運転の無人タクシーがあった場合、果たしてどちらに乗るか。無人の方が料金が安ければ、おそらく無人タクシーに乗る人が圧倒的だと思う。料金が同じでも、かなりの人が無人タクシーを選ぶと思う。

 タクシーを無人の自動運転に切り替えて、料金を現在の1/2以下にすれば、電車とも競争できる。

 その際、余ったタクシー運転手は、介護や葬儀のような"成長産業"に移ってもらうのが良いだろう。

 若干の痛みを伴うが、私見では、タクシー業界が「ここ40年の停滞」から脱却するためには、「自動運転技術導入による無人化」と「運転手の人件費分の運賃引き下げ」の断行が必要不可欠だと思う。

 山田宏哉記

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2013.12.21 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ