ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3313)

 読書で収入は増えるか   

 あまり公然と言われることはないが、「読書で収入は増えるか」という点について、正面から考えたい。

 改めて振り返ると、僕は18歳の頃から、年間数百冊のペースで本を読んでいる(小説は殆ど読まない)。

 その間、高校、大学受験予備校、大学、大学院、民間企業と、身を置く場所は変化してきた。その時々によって読む本の傾向は違ってきたが、読書の習慣そのものは、変化していない。

 世間一般では、「読書は自己投資」と捉えられる傾向が強い。コツコツと読書すれば、徐々に収入も増えていく印象がある。ビジネス本の作家も、(自分の本を売りたいから)「読書をすれば収入が増える」と言う。

 果たして、このような読書の習慣によって、僕の収入は増えたか。

 正直に言うと、「あまり変わらない」と感じている。

 確かに、多少は読書したことによる利益があった。ただ、読書で得た知識や情報の総量と比較すると、実務で役立った知識や情報は、本当にごくわずかだ。

 なぜ、このようなことになるのか。

 まず、大前提として言えるのは、「お金を儲けるのは、とても難しい」ということだ。お金をめぐる競争は、あらゆる競争の中で最も熾烈な部類に入る。そう簡単には勝てない。

 確かに、商売(お金儲け)の基本形は、「商品を作って、売る」というもので、シンプルだ。だが、難易度は高い。

 商品を作るためには技術力や人材、生産設備が必要だ。人材を集め、設備投資をするには、そのための資金も必要になる。商品を作ったら作ったで、価格や販売方法、販売経路を最適化しなければならない。

 こういう実務的な問題は大抵、直接的には読書で解決しない。

 解決すべき課題は、個別具体的な事柄であり、自分の置かれた状況や制約は、その都度、違ってくる。しかも、生身の人間に対して説得したり、お願いしたりしなければならない。

 単に「頭の中に知識やアイディアがある」というだけでは、お金は稼げない(≒収入は増えない)のだ。

 例えば、「攻殻機動隊」の光学迷彩でも、「ドラえもん」のタケコプターでも良いのだが、最終的に製品になったイメージのアイディアを出すだけなら、それほど難しくない(単にこういうアイディアを出すためだけなら、読書は直接的に役に立つ)。

 難しいのは「いかに機能を実装するか」という技術的な課題の方であり、更には「いかに売れる価格で量産するか」というビジネス上の課題の方である。

 「タケコプターを実用化すれば、大ヒットする」と言うだけでは、ゴミ同然のアイディアだ。

 例えば、タケコプター開発で肝になるのは、タケコプターの機能を実装する技術、開発人材の確保、量産のための設備投資と資金調達、品質管理、顧客と販売方法、墜落事故が起きた場合の補償対応などである。

 知識や情報を持っているだけでは、お金にはならない。

 お金を稼ぐためには、こういう厄介な各論をひとつひとつ撃破して、自分のアウトプット(成果)として、蓄積していくしかないのだ。

 大半の人は、企業と雇用契約を結んで、そこから賃金を貰うという形にしないと、とてもじゃないが、お金を稼げない。また、組織で働く場合、仕事に役立ったからといって、直接的に収入が上がるわけではない。

 そういう意味では、収入を増やすために、読書をするのは、随分と遠回りだ。

 結果的に読書が役立つことはあるものの、読書に即効性の効果を期待しても、期待外れに終わる可能性が高いと思う

 本を読んで、自分の仕事に役立つ記述が1ヶ所でもあれば、それで御の字とするくらいが良いと思う。

 山田宏哉記

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