ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3315)

 長時間残業が減らない本当の理由  

 日本の労働問題として、「長時間残業」や「有給休暇の消化率の低さ」が挙げられることが多い。

 要は働きすぎというわけだ(厳密には単に「会社に居座り過ぎ」なだけであって、成果を出しているわけではない)。

 この理由として決まって挙げられるのが、「仕事が忙しい」である。そして、何となく「仕事が忙しいなら、仕方ないね」みたいな話になって、この問題はうやむやにされる。
僕は、「長時間残業」や「有給休暇の消化率の低さ」といった問題の本質は、人事評価にあると考えている。

太田肇(著)『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP)には、以下のような記述がある。

"日本企業では、遅くまで働く社員、休暇を取らない社員を高く評価する傾向がある。逆に言えば、いくら仕事ができても定時に帰る社員や休暇をめいっぱい取る社員には、何かと理屈をつけて評価を低くする。"(本書P43)

"興味深いのは、サテライトオフィスで働く社員や、評価者が離れた本社にいる営業所のスタッフはおしならべて帰りが早いことだ。評価に響くことを気にしてパフォーマンス残業をする必要がないからだろう。"(本書P47)

 仕事ができない人にとって、有給休暇を消化しないのは、実は合理的な行動だ。常識的に考えれば、退職勧奨や処罰人事といったセンシティブな打ち合わせは、「対象となる本人が休んだ日」に行われる可能性が高い。

 いくら「有給休暇を取得しても、不利益な扱いをされることはない」と言っても、実際問題として、「ネガティブな人事の話」をする時、対象となる本人が、「現場で汗を流して働いている」のと、「有給休暇を取得中」では、印象は大違いである。処分内容そのものに影響を与えても、不思議ではない。

 現実問題として、仕事のパフォーマンスが低い人が、上司から「有給休暇を取得したらどうか?」と勧められたら、要注意である。休暇明け、会社に出勤すると、人事に呼び出され、「残念だが…」という話が始まったりする。休暇を与えることで、上司は「恨まれる度合い」を減らすわけだ。

 長時間残業も同じで、「追い出したい社員」がいる場合、常識的に考えれば、本人が退社してから、その件についての打ち合わせをする。処分に怯える社員は「今帰ったら、自分に対する処分の打ち合わせが始まる」と考えがちだし、この考えは、あながち的外れではない。

 「長時間残業をやめましょう」とか「有給休暇を取りましょう」といった建前が浸透しない決定的な理由は、「ネガティブな人事の話」は、「本人がいない時」に行われる可能性が高いからだ。

 是非はともかく、「毎日出勤、長時間残業」は、雇用のリスクヘッジになっている。

 更に言えば、「毎日出勤、長時間残業」の背景にあるのは、日本の陰口文化だ。日本人は、その場にいない人の品評をして、悪口を言って盛り上がる。自分が悪口の対象にならないためには、常にその場に居座っているしかない。

 個人レベルの話で、堂々と「定時退社、休暇取りまくり」を実践するには、やはり「圧倒的成果を出すこと」が一番だと思う。誰の目にも明らかな形で圧倒的成果を出し、更に情報やノウハウも惜しみなく共有すれば、仕事面での悪口は、そうそう言われるものではない。

 また、「定時退勤、休暇とりまくり」の明るい職場づくりをするためには、人事権を持つ上司が、率先して、早く帰ったり、休暇を取ったりする必要がある。

 部下は自分の不在時に「ネガティブな人事評価」をされるのが嫌なので、休暇も取らず、長時間残業をしている可能性が高いのだ。

 山田宏哉記

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2014.1.11 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ