ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3316)

 回想:阪神大震災   

 阪神大震災が起きたのは、1995年1月17日だった。僕は当時中学1年生で、埼玉県に住んでいた。朝のニュースで、地震の存在を知ったと記憶している。

 初期の報道では被害状況は「切れた電線で怪我をした人がいる」といった具合に実態を反映していなかった。

 阪神大震災の日、僕は何事もなかったように、中学校に登校した。しばらくすると、先生や他の生徒たちがそわそわし始めた。何事かと思っていると、どうやら阪神大震災の被害が予想外に大きく、何百人もの死者が出ていると教えられた。

 それからというもの、僕は報道を通して、死者の数が積み上がっていくのを眺めていた。それは気の毒なことではあったが、僕の日常には、直接的には関係がなかった。僕は相変わらず、何事もなかったように、中学校に通い続けた。

 当時の僕にとっては、阪神大震災のことより、日々の学校の成績や部活動のことの方が重要だった。「ボランティアに出かける」という選択肢は、思いつきもしなかった。

 阪神大震災からの復旧がままならないうちに、東京の地下鉄で猛毒のサリンがばら撒かれる事件が起きた(地下鉄サリン事件)。日本国民とマスメディアの関心は、オウム真理教一色となった。そして、阪神大震災は急速に忘れられていった。

 1990年代の小中学校の生徒の間では、ノストラダムスの予言が大真面目に信じられていた。「どうせもうすぐみんな死ぬんだ」みたいなことが言われていた。

 今思えば、平和な時代だったからこそ、「生死に関わる刺激」を求めたのだと思う。

 オウム真理教の信者になった若者たちは「敷かれたレールの上に乗って、同じような毎日を繰り返し、平凡な人生を送る」という閉塞感が、我慢できなかったのだと思う。ノストラダムスの予言(大迷惑だった)も、結構真面目に信じられていた。

 だからこそ、『完全自殺マニュアル』のような本がベストセラーになった。

 阪神大震災が起きるまで、日本は退屈で、閉塞感に満ちていた。敷かれたレールの上に乗って、同じような毎日を繰り返し、平凡な人生を送る。それが時代の空気だった。

 阪神大震災と地下鉄サリン事件が起きた1995年は、時代の転換点となる年だった。時代の空気も変わった。阪神大震災が起きるまでは、「平凡で退屈な日常が続く」という漠然としたイメージが、世の中を覆っていた。

 結果的にみれば、阪神大震災はこのような閉塞感を打ち破った。何気ない日常の大切さを人々に見せ付けたのだった。

 山田宏哉記

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2014.1.13 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ