ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3318)

 なぜ、人は「肩書き」にこだわるのか   

 最近、立派な名前の職業が増えたように感じる。「クリエイティブな仕事がしたい」と言う人もたくさんいる。

 営業職をマーケティング・アドバイザーとかソリューション・コンサルタントのように呼ぶ事例も増えた。浮浪者をノマドと呼んで持てはやす風潮もある。

 今更だが、「なりたい職業」と「したい仕事」は、似て非なるものだと思う。更に言えば、「なりたい職業」とは、厳密には「世間に対して名乗りたい職業」のことであり、具体的な仕事内容は、実はどうでもいいのだと思う。

 本心は単に「肩書き」が欲しいだけなのだと気づいた。

 「ビジネスを通して、貧困問題の解決に取り組みたい」と言う人と、「社会起業家になりたい」と言う人は、一見似ているが、ベクトルが全く違う。前者は具体的な問題解決を志向しているが、後者は自分の肩書きのことしか考えていない。

 個人的には、肩書きにこだわる風潮には、ずっと違和感をもっていた。

 人はなぜ「立派な肩書き」を欲しがるのだろうか。確かに、「立派な肩書き」があれば、自分を大きく見せることができる。

 おそらくは、「大手広告代理店勤務」とか「外資系コンサル勤務」とか自己紹介をした時、他の人から「おぉ!」とか「凄い!」とか言われたいのだろう。

 とはいえ、例えば、自己紹介で「○○商事の田中です」と言えば、重要なのは○○商事の方で、自分はオマケみたいな存在になる。だから、僕はこのような言い方はしたくない。

 正直言うと、僕にもわかりやすい肩書きが欲しい時期があった。「不遇で冷飯を食っている」という自覚があった時期で、「見返してやるため」にも、わかりやすい肩書きが欲しかった。

 但し、不思議なことに、仕事の成果が積み上がる度に、肩書きへのこだわりも消えていった。今の僕の肩書きは、「何でも屋」でも、「投機屋」でも、「掃除屋」でも、別に構わない。成果を出して自信がつけば、特に肩書きに頼る必要はなくなる。

 ハッキリ言うと、肩書きに頼りたくなるのは、実力あるいは実績がないからだと思う。だからこそ、手っ取り早く、肩書きで自尊心を満たそうとする。

 人はなぜか、等身大の自分以上に箔をつけたがる。そして、このような「キャリアアップの幻想」があるからこそ、資格業界は繁盛する。

 実際には、みすぼらしさが一層際立つというのに。

 等身大の自分と比較して、肩書きが立派になるほど、自分自身がオマケのような存在になる。まるで、高級スーツを着た浮浪者のようだ。

 山田宏哉記

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2014.1.18 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ