ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3321)

 個人主義者は会社勤めできるか  

 果たして、個人主義者は日本の会社組織に適応できるのか。僕にとって、これは切実な問題だった。

 自分を実験台にした結論を言えば、強度の個人主義者でも、日本の会社組織に適応することは一応、可能だと思う。

 ただ、業種や業界、会社の事業領域から職種や人間関係、仕事の進め方に至るまで、注意しなければならない点は結構ある。

 人並みの成果を出せることを前提にすると、個人主義者が会社勤めをする上で、最も気を付けるべきは何か。

 それは、「情報面での孤立」だと思う。

 フェアではないと思うが、現実には飲み会のような非公式の場で、重要な情報交換がなされる事は結構ある。泥臭い人間関係に乗り気でない個人主義者は、ここで出遅れてしまう。

 個人主義者は飲み会やタバコ部屋、休日ゴルフでの情報交換が手薄なので、疑問点を勤務時間中に解決しておかないと、その分不利になる。

 飲み会やタバコ部屋、休日ゴルフでの情報交換に対抗するためには、「自社の基本情報を押さえる」「勤務時間中に、普通の人よりコミュニケーションを多めに取る」のが有効だ。

 自社の主要顧客や商品、販売方法、社員の顔と名前、担当範囲など基本的な事項を一通り押さえておくのは、「当たり前のこと」だ。「自分のことにしか関心がない」では会社組織を生き残れない。

 しかし、多くの人は、この「当たり前のこと」ができていない。「今日の仕事」に差し支えない限り、知らないこと、わからないことを放置し続ける。

 自社のことについて、疑問点や不明点があれば、担当者に確認すれば済む。

 こういう機会を利用して、自社の事業に関する疑問点や不明点を確認するついでに、関連する情報も収集すれば、飲み会やタバコ部屋、休日ゴルフでの情報交換に、ある程度、対抗できると思う。

 会社勤めをしているなら、主要顧客、自社商品の特徴や販売方法、社員の顔と名前、担当範囲などをコツコツ覚えるのが、結局は、費用対効果が高い。

 自社の基本的な事項を差し置いて、資格や英会話、異業種交流会や自己啓発セミナーに走るのは、本末転倒だとハッキリ指摘しておきたい。

 いくらドヤ顔ノマドが好きな「ポータブルスキル」を持っていても、その時々、自分がいる場所で成果を出さなければ、仕事を確保することはできない。

 いずれにせよ、よくよく自覚しておくべきは、やはり日本の会社組織では「やはり個人主義者は不利」だということだ。

 従って、個人主義者は常に平均以上の成果を出さなければならない。「人並み以上の成果を出して、ようやく人並みの評価が得られる」くらいに考えた方が良い。

 個人主義者である以上、「評価が低くても受け入れる」のは、意外と重要なことだ。

 個人主義者にとって重要なのは、あくまで「会社勤めに関することは、残業をせず、勤務時間中に完結させる」ことだ。

 超高速で仕事そのもので圧倒的な成果を出しつつ、仲間とのコミュニケーションも充実させ、知識や技術習得も勤務時間中に済ませ、残業せずパッと帰る。これが理想だ。

 そして、このような仕事のスタイルを取る以上、犠牲にしなければならないものがあるのも事実だ。

 仕事ができる個人主義者より、「頭空っぽで合コン三昧」の無能な人の方が高く評価されることは、よくある。これは仕方ないし、受け入れるしかない。

(とはいえ、会社は営利組織なので、社員の勤労意欲を削ぐような、「不当な評価」を長くは続けられない。これがあまりにひどいと、会社の経営が傾いてしまう)

 それが嫌なら、タバコ部屋で噂話を吹聴し、「夜は飲み会、休日はゴルフ」のゴマすり人生を歩むしかないだろう。

 山田宏哉記

【関連記事】
プロジェクトで成果を出す(2014.1.25)
日雇い派遣に学ぶプロジェクトの本質(2014.1.18)
長時間残業が減らない本当の理由(2014.1.11)
誰が"面倒な雑用"をするべきか(2013.12.30)
タクシーに未来はあるか -業界復活の切り札-(2013.12.21)
TV電話が普及しない本当の理由(2013.12.7)
就職活動の勝敗は10歳の頃に決まっている(2013.10.25)
『ちびまる子ちゃん』で学ぶ「教室内カースト」(2013.10.20)
なぜ、日本人の7割には中学レベルの知識もないのか(2013.9.22)
勤労の美徳と資本主義の強欲 (2013.9.21)
ウェブへの上場と不特定多数による評価 (2013.9.16)
仕掛けと手仕舞いの仕事論 (2013.8.31)
"この世にいらない人間"と動物的本能の暴走 (2013.8.20)
人間的魅力の効用と限界 (2013.7.28)
勤勉という美徳の終わり(2013.6.30)
仕事がなくて暇な会社員(2013.6.30)
勉強で得られる知識は、価値が低い(2013.6.22)
仕事が好きな人、嫌いな人(2013.6.1)
仕事に"専門的な知識と能力"は必要か(2013.4.27)
ビジネスでは、あまり努力しない方が良い理由(2013.4.20)
誰が「腐った人材」を養うのか(2013.4.13)
「パンを分け合う仲間」としての会社(2013.3.30)
なぜ、あの人は「本を読むバカ」なのか(2013.3.26)
「やればできる」の仕事論(2013.3.23)
なぜ、ユニクロの離職率は高いのか(2013.3.16)
若者よ、貯金は止めた方が良い(2013.3.12)
英語公用語化の真意(2013.3.9)
薄給の時代 、副業の損得勘定(2013.3.2)
株で勝つのが難しい理由 (2013.3.2)
残業を良しとする"村の論理" (2013.2.24)
お金を稼ぐ力、組織を泳ぐ力(2013.2.16)
「みんな」という名の不審人物(2013.2.9)
リスクヘッジとしての株式投資(2013.2.2)
勤労の国の幸福なサラリーマンたち (2013.1.27)
公務員の"駆け込み退職"騒動の本質(2013.1.26)
株式投資の「究極の目標」とは何か(2013.1.23)
シャープ株の売買で気付いたこと(2013.1.17)
"試練の場"としての株式投資(2013.1.14)
中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』覚書(2013.1.4)
読書の費用を回収できるか(2013.1.4)
いかに「読むべき本」を確保するか(2013.1.4)
"紙本主義"の終わりとアマゾンのキンドル生態圏(2013.1.1)
信仰告白のビジネスモデル (2012.12.29)
iPhoneの防水ケースと家電量販店の終わり(2012.12.26)
なぜ、デートでサイゼリヤに行ってはいけないのか?
(2012.12.22)
ペニーオークション詐欺の教訓(2012.12.22)
汗で稼いだ一万円、投資で稼いだ一万円(2012.12.19)
実務に活かす株式投資(2012.12.15)
アウトソーシング時代の働き方(2012.12.8)
「飽きないこと」を仕事にする(2012.12.2)
ビジネスに活かす優先的選択(2012.11.27)
もしも世界が男女10人ずつの高校の教室だったら
(2012.11.25)
"ホームレス転落"という悪夢 (2012.11.24)
映画『シルク・ドゥ・ソレイユ』に学ぶ人材配置 (2012.11.18)
シュートを打つ人、パスに逃げる人 (2012.11.17)
若さゆえの飢餓感 (2012.11.17)
動物王国としての実社会 (2012.11.11)
人生を語る不誠実さ (2012.11.11)
映画『009 RE:CYBORG』覚書(2012.11.4)
なぜ、経歴を詐称するのか(2012.11.3)
愛は地球を救えない(2012.10.24)
労働貧困層と生活保護(2012.10.22)
ルサンチマンのある人生(2012.10.18)
世界は"不本意な職業"で溢れている(2012.10.15)
不本意な職業を受け入れる(2012.10.13)
僕たちは「格差社会」を望んだ(2012.9.24)
「人間好き」のファシズム (2012.9.17)
強者はデモに参加するか(2012.9.15)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)



2014.1.26 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ