ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3323)

 バレンタインデーと人生の不平等   

 日本の子供たちは、バレンタインデーに、学校の成績とは異なる評価軸があることを思い知る。特に男子生徒はこの日、人生の不平等と世の理不尽を味わうことになる。

 少なくとも、1980年代以降の学校空間を生きた人なら、男女ともに、バレンタインデーのプレッシャーがかなりきつかったことを記憶していると思う。

 小学校時代、家の近所に爽やかな先輩が住んでいて、バレンタインデーには、女子生徒が家の前に押し掛けていた。僕は「羨ましいなぁ」と思って、その光景を眺めるだけだった。

 とても優しい女性の先生もいた。バレンタインデーに、男子生徒全員にチョコを配っていた。なるべく、男子生徒の自尊心が傷付かないように、配慮していたのだと思う。

 まさに弱肉強食で、女性に相手にされない男性は、惨めに二次元の世界に逃避する。

 母親に対して失礼な話だが、「母親からしかチョコをもらえない男子は、負け組」なのだった。

 僕と同時代に学校生活を送っていた人なら、こういう風潮を肌で感じていたんじゃないかと思う。

 但し、不思議なことに、学校生活を終えると、なぜかバレンタインデーはあまり気にならなくなった。

 僕なりの結論を言えば、日本のバレンタインデーは、「学校行事」なのだと思う。閉鎖的な空間に、男子と女子が集まっているからこそ、プレッシャーと一喜一憂の度合いが大きくなる。

 狭い世界での出来事を、世界の全てと思い込む。外の世界を知らなければ、それも仕方がない。

 だから、学校空間を離れてしまえば、どうってことはない。

 もちろん、僕自身、今でも恋人からチョコを貰えるととても嬉しいが、誰かと競争しているようなプレッシャーは、いつの間にかなくなった。

 周知の通り、日本において、クリスマスやバレンタインデーは「勝ち負け」を競うイベントと化している。

 もっと明確に言うと、日本においては、(外泊できる)成人向け男女の主戦場はクリスマスであり、バレンタインデーは(外泊できない)未成年の男女向けの主戦場ということになる。キチンと役割分担されている。

 わざわざ「性の勝ち組」と「性の負け組」を分けるイベントは、クリスマスとバレンタインデーの2つだけで充分だ(だから、日本ではイースターや感謝祭、ハロウィンなどは定着しない)。

 いずれにせよ、バレンタインデーのチョコレートは「人生の不平等」の味がするのだ。

 山田宏哉記

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