ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3325)

 なぜ、1日8時間働くのか

 殆どの日本企業では、1日の所定労働時間は8時間くらいになっていると思う。

 実際に8時間働いて退社する人は少数派だと思うが、法定の労働時間の上限が1日8時間になっているので、それに合わせている企業が大半だろう。

 肝心なのは、1日8時間というのは、仕事から逆算して、必要な時間と割り出した時間ではない点だ。経営サイドからみれば、「労働時間を少なくするのは簡単だが、多くするのは大変」なので、初めから従業員を長時間拘束した方が合理的判断となる。

 子どもの頃、大人は毎日、8時間以上働くことを知って、絶望的な気分になった。

 新人の頃、偉い人に「1日8時間も働くのは大変ですね」と言ったら、「もっと長く働くことになるよ!」と返された。

 そして、僕はその後、仕事と勉強に1日16時間を使うことになった。また、時は経ち、僕も修羅場を経験することで、依然と比べ、生産性は圧倒的に高くなった。

 それでも、僕は今でも、子どもの頃の「1日8時間も働くのは長い」という感覚を持ち続けている。やっぱり、「1日8時間も働くのは、長くないか」と。

 働いている人に、本音ベースで話を聞くと、「早く帰りたい」と思っている人が多い。だったら、早く帰れば良いと思うのだが、「仕事が忙しい」とかゴチャゴチャ言って(本当は人事評価を気にしているだけ)、結局、残業をしたりする。

 「仕事が忙しい、忙しい」と言っている割には、日本企業では、随所で手待ち時間(何もすることがない状態)が発生する。

 手待ち時間が慢性的に続く人は、社内ニートと呼ばれる。表向きは「仕事が忙しい」と言う人ばかりだが、日本には社内ニートがたくさんいる。一時話題になった「ソリティア社員」も同じ意味だ。

 これまで僕は、社内ニートの問題は、主として「本人の能力不足の問題」と考えてきたが、仕事そのものと比較して、労働時間が長すぎることも、社内ニートになる原因だと思う。

 また、社内ニートでなくても、1時間でできる仕事を8時間に引き伸ばしてやるような人も結構いる。

 僕はかねてから、「仕事が忙しい」ことより、「仕事が足りない」ことを問題視している。

 仕事そのものが足りなくなると、例えば事務所の蛍光灯のスイッチのオンオフを、帳票で管理するような人が出てくる。そして、「仕事が忙しい、忙しい」とアピールする。

 「仕事が忙しい、忙しい」と言っている人の中身を精査すると、実は無駄なこと(=損益や顧客満足と関係ないこと)をしていたり、やり方が非効率だったりする。

 とはいえ、僕は殊更、そういう人個人を悪く言うつもりはない。

 これは仕事の絶対量が足りない中での自己保身なのだ。自分が「余剰人員」と見做されて、削減対象になることがないよう、必死にアピールしているだけなのだ。

 非効率な仕事や非効率なやり方が放置される理由のひとつは、それで飯を食っている人がいるからだ。非効率なことをしないと、1日8時間が手持ち無沙汰になってしまう。

 「1時間でできる仕事を8時間に引き伸ばしてやる」のは、一見、馬鹿げているが、労働者個人としては、案外、合理的な行為である。

 少なからぬ人は、仕事そのものから逆算すれば、1日8時間も働く必要がないのに、「労働時間の上方硬直性」のため、必要以上の時間を拘束されている。

 ただ、「有給休暇の積極取得」や「技術習得や勉強を勤務時間中に終わらせる」など、個人レベルで取れる時間の有効活用策はある。

 そして、何より大切なのは、キッチリと仕事で圧倒的な成果を出すことだ。他人の視線が気になる究極的な理由は、「成果を出していないことが、後ろめたいから」だと思う。僕自身を振り返っても、そうだった。

 誰がどう見ても、「給料以上の仕事をしている」のであれば、わざわざ「仕事をしている振り」をしたり、「仕事が忙しい、忙しい」とアピールする必要はないのだ。

 山田宏哉記

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