ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3334)

 時間を売るポジションと人材マーケットの論理

 実社会で働く上で、本当に必要なものは何か。一般的には、高等教育や専門技能、あるいは各種資格などだと見做されている。

 しかし、僕はこのような認識は、的外れだと思う。

 世の中で働いて、生計を立てる上で最も大切なのは「時間を無駄にする覚悟」だ。

 言うまでもないが、人間にとって、最も貴重な資源は時間だ。時間は、人生や生命そのものである。しかも、時間は不可逆で、失われた時間は二度と戻ってこない。

 アルバイト情報誌やハローワークで求人情報をみると、すぐに気付くだろうが、求人が最も盛んなのは「時間を売るポジション」である。いや、「時間を売るポジションしかない」と言っても、過言ではない。

 時間だけは、誰しも平等に持っている。そして誰もが、時間を無駄にしたくないと考えている。

 それほど貴重な時間だからこそ、普通の能力の人でも、時間を売ることによって、生活に必要なだけの収入を得ることができる。

 一方、「時間以外の資源を売るポジション」の求人は圧倒的に少ない。スターバックスでコーヒーを飲みながら、「読んだ本の感想」や「奥さんとの会話」を書き連ねれば済むような求人案件は、決してない。

 冷酷だが、これが人材マーケットの論理である。

 深夜のコンビニやファミレス、ネットカフェなどの店員は、やることがなくて、いかにも暇そうに見える。しかし、いくら暇でも、その場に居続けなければならない。

 工場の生産ラインで長時間、延々と単純な反復作業を繰り返すのも、「時間を売るポジション」と言える。

 「時間の無駄使い」にみえるポジションは、高等教育を受け、自分の能力に自信がある人にとっては、受け入れがたい仕事だろう。

 また、「時間の無駄使い」にみえる仕事だからこそ、カネを払ってでも、他人にやってもらいたいと思う。需要やニーズとは、本来、そういうものだ。また、時間を売る仕事だからこそ、お金を稼げるのだ。

 内職をするのと、アルバイトで働くのでは、稼げる金額に大きな差が出る。

 内職は、成果を売るだけで、直接的には時間を売っていない。だから、安い金額にしかならない。

 冷酷だが、普通の人は、内職だけ(=成果を売るだけ)では生きていけない。貴重な時間を売ることでしか、生活できるだけの収入を得られないのだ。

 「時間を無駄にしてはいけない」という言葉は正しい。それでも、やっぱり世の中を支障なく回すためには、誰かが「深夜の店番」のような「時間を売るポジション」につかなければならない。

 人は、時間以外に売るものがないなら、否応なしに、時間を売るしかない。そうしなければ、生計を立てられない。

普通の能力の人は「時間の無駄遣い」をしなければ、生活費を稼げない。

 生計を立てるために、「時間を売るポジション」につき、人生で最も貴重な時間を無駄にせざるを得ない。

 更に言うなら、このような構造こそ、「労働の厳しさ」の本質なのである。

 山田宏哉記

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