ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3338)

 コストとリターンで学ぶ商売の基本 

 商品やサービスが売れるための条件は何か。経済合理的に考えれば単純で「コストをリターンが上回ること」である。

 合理的に判断をする人や企業であれば、購入費用より見返りの方が大きい商品やサービスについては、購入に前向きになる。

 わかりやすい例は、金券ショップである。金券が額面相当から一定比率を割引いた現金で手に入る。\1,000の図書券が\900で手に入るなら、買いたいと思う読書家は多いだろう。

 もちろん、世の中の多くの商品は、金券ショップの商品ほどには、リターンを明確に示すことができない。具体的に商品やサービスを考え、顧客に対して、わかりやすく証明することは難しい。

 また、費用対効果をめぐって、競合との価格や品質の競争も生じる。そのため、現実には一筋縄ではいかない。

 それでも、コストよりリターンの方が大きいことは、商売をする上で、最も重要な条件のひとつだと僕は思う。

 一見、わかりにくい構造をしているが、一般的に水や食料品の購入は、明確にコストよりリターンの方が大きい。

 人間は水分や栄養を摂らなければ、生命を維持できないからだ。「水と食品を買えば、生命を維持できる」と言うと聞こえは悪いが、これこそ、水や食品が売れる本質的な理由だ。

医者や医薬品業界が儲かる本質的な理由も、「人間の生命」を人質に取っているからだ。

 医者に「この治療を受けなければ、生命が危ない」と言われたら、拒否するのは難しい。人聞きは悪いが「人間の生命」を人質に取れば、手堅い収益を見込める。

 この点について言えば、生命保険や防災関連の業種も同様だ。

 水や食品、医療などは、リターンが「生命の維持」なので、一般消費者もコストを負担することに抵抗が少ない。

 「人命を守る」という錦の御旗があれば、何事も予算が通りやすい。

 原価¥300の医薬品や非常食が¥10,000でも文句は出にくいが、原価¥300の本やゲームの定価が¥10,000だと、「高い」とクレームの嵐になるだろう。

 一方、情報やエンターテイメント系の商品は、リターンが不明確で、生命の維持にも直結しない。だから、一般消費者は一冊の本を買うのも躊躇しがちになる。

 情報やエンターテイメント系の分野で商品やサービスを売るなら、「購入によるリターンの提示」が欠かせない。リターンの提示が合理的で、説得力があれば、商品は売れる可能性が高い。

 リターンが不明確な商品(私生活を綴った有料メルマガやアイドルの握手券とか)を売るのは、信者ビジネス(信仰者からお布施を毟り取るビジネスモデル)であり、博打と変わらない。

 ちなみに、企業も一般消費者も「知的好奇心の満足」のためには、原則、お金を払わない。「知的好奇心の満足」は優先度が低い。消費税が上がれば、この傾向は更に加速するだろう。

 なお、シニカルな見方かもしれないが、一般消費者が「お金を払ってもいい」と考える対象は、「生命の維持」「お金儲け」「良好な人間関係」の3つに限られると思う。趣味や知的好奇心、娯楽関係の商品やサービスは、必需品ではないので、いざという時に弱い。

 一般消費者向けに商売をするなら、少なくとも「生命の維持」「お金儲け」「良好な人間関係」のどれかに貢献する商品なりサービスを提供するのが得策だと思う。この領域なら「コストをリターンが上回ること」も示しやすい。

 いずれにせよ、商売の基本は「顧客にとって、コストよりリターンの方が大きいこと」だ。また、そうあってこそ、良好な関係を続けることができるし、自信を持って「顧客に貢献した」と断言することができるのだ。

 山田宏哉記

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2014.3.16 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ