ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3339)

 「身分差別ゲーム」のある職場を考える 

 英語公用語化で有名な某IT企業で、「社員食堂は無料だが、派遣社員は利用不可。近所のイオンのフードコートで食べて」という趣旨の身分差別(嫌がらせ)があることが話題になっていた。

 「神は細部に宿る」という言葉がある。

 職場の風通しの良さや雰囲気を測る指標として、「社員食堂の利用資格」に注目するのは、充分にありだと僕は思う。そして、「社員食堂の利用資格」が差別的な企業は、「職場の雰囲気が悪い」と判断して間違いないと思う。

 逆に、良い社員食堂で思い出すのは、新宿の百貨店・伊勢丹だ。学生時代、僕は伊勢丹で掃除屋をしていた。当時、伊勢丹の社員食堂は、掃除屋のアルバイトでも利用することができた。掃除屋の僕から見ても、伊勢丹は良い職場だった。

 なお、「職場」とは、半径5メートルの世界の話だ。同じ企業の中であっても、職場によって、雰囲気は全く違う。極端な話、「変な人」が1人いるだけで、職場の雰囲気は、いい意味でも、悪い意味でも、違ってくる。

 学校の教室と同じで、職場は構造的にいじめや嫌がらせが起きやすい環境だ。仕事そのものを楽しめない人にとっては、娯楽の要素が人間関係しかない。しかも、職場は、「生活の糧」を得る場でもあり、生存競争は学校の教室より厳しいものとなる。

 更に言えば、人は「自分のすぐ下」の人を差別する傾向がある。在日外国人を差別するのは、「底辺の日本人」であるように、派遣社員やアルバイトを差別するのは、成果を出せない底辺の正社員と相場が決まっている。

 また、人間は、どうしても「似たもの同士」で群れる習性がある。性別、年齢層、雇用形態、喫煙の習慣の有無など線の引き方は色々ある。

 職場の風通しを良くするためには、ある程度意図的に「似たもの同士の人間関係」をシャッフルし、「多様性」を確保する必要がある。職場から「身分差別ゲーム」を排除するには、この種の配慮も欠かせない。

 例えば、派遣社員が派遣社員同士で群れて固まる職場は、風通しが悪い。そして、職場の雰囲気が悪くなれば、仕事のパフォーマンスも落ちてしまう。

 企業業績を考慮しても、「派遣社員は社員食堂の利用不可」みたいな「身分差別ゲーム」をするのは、愚の骨頂である。

 職場の飲み会で出欠を確認すると、職場によっては「女性が全員欠席」とか「正社員以外が全員欠席」といった"異常値"が出ることがある。こういう職場は大抵、重大な問題を抱えている。

 現実には「差別はいけません。やめましょう」と言っても、差別はなくならない。なぜなら「身分差別ゲーム」は、動物の本能にも合致しており、面白いからだ。

 だから、職場の風通しを良くするには、「身分差別ゲーム」よりも、「仕事そのもの」を面白くするしかない。

 学校の教室でも、勉強そのものに集中する生徒は、おそらく「身分差別ゲーム」に加担しないだろう。

 万人に対して、「勉強そのものに集中せよ」と要求するのは非現実的だが、生活に直結する以上、「仕事そのもの」に集中することは、比較的多くの人ができると思う。

 仕事そのものに集中できる環境をつくること。一見、当たり前だが、これこそ、職場から「身分差別ゲーム」を排除する上で、最も重要なことだと思う。

 山田宏哉記

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2014.3.21 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ