ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3342)

 変革断行のポリティクス 

 組織の中で、抜本的な変革を断行するのは、最も難しい部類に入る仕事のひとつだと思う。

 人間は基本的に保守的で、些細なことでも「既得権益」が脅かされると、必死に抵抗をする。自分自身のことを振り返っても、そういう傾向がある。このような抵抗を押し切って、抜本的な変革を断行するのは、決して容易なことではない。

 これまで、僕はいくつか、規模は小さいものの、「閃きを元に、ゼロから作る」という経験を積んできた。成果物を運用ベースにも乗せることもできた。

 その上でよく思うのは、「既存の秩序や手法を抜本的に変革するより、むしろゼロから作る方が容易い」ということだ。

 僕は個人的アイディアをもとに、「ゼロから作り上げる」のが得意で、この領域では、成果を出してきた。だが、「既にあるものに対して、抜本的な変革を加える」ことについては、あまり成果を出せておらず、自分でも課題だと思っている。

 僕がゼロベースで成果を出すことができたのは、それが「隙間の領域」のことだからだ。要は、他の人が見逃している部分に注目して、それで成果物をつくる。これなら、利害関係者からの「激しい抵抗」に遭うこともない。

 私見では、強い権限を持たない人が、人と組織を動かして変革を断行するには、「証拠金」を積み上げ、レバレッジをかけて、勝負に出るしかない。ここで言う「証拠金」とは、「実績の総量」であり、要は「これまでに築いたもの全て」である。これを差し出すしかない。

 組織の中で、変革断行を手掛けるのは、ハイレバレッジの投機売買をするようなもので、失敗すれば、全ての証拠金を失うだけでなく、借金まみれになる可能性もある。

 その分、変革断行に成功すれば、大きな成果を出すことができる。

 投機で勝つための最も重要な条件は、「資金力」である。証拠金を使っての取引では、含み損が増えて、証拠金が一定比率以下になると、強制ロスカットされてしまう。

 変革断行でも、変革推進の当事者の「資金力」(実績の総量)が不充分だと、すぐに強制ロスカットとなり、変革は失敗となる。

 組織の中で、若手の抜本的な提案が、あまり採用されない主要な理由のひとつは、「証拠金(=実績の総量)不足」だと僕は思う。

 つまり、変革のインパクトと比較して、「賭け金が少なすぎる」というわけだ。投機においても、いくらアイディアが良くても、証拠金不足では話にならない。

 「"誰が言ったか"より"何を言ったか"が重要」というのは正論だが、変革には"痛み"が伴うため、私腹を肥やす人が変革を唱えても、まともに相手をする人はいない。

 変革の当事者は単に実績を求められるだけでなく、「人間として信用できるか、否か」まで問われる。

 これまでの僕は、変革を断行するには、明らかに証拠金不足(実績の総量不足)だった。だから、個人技でゼロベースの企画をすることはあっても、既にあるものについては、修正や改善レベルにとどまり、抜本的に変えることは避けてきた。

 但し、ここ最近、証拠金(=実績の総量)が一気に積み上がったので、小規模であれば、領域によっては、変革の当事者になれる可能性がでてきた。やや意外だったが、他人の既得権益に接触してでも、「為すべきこと」を為すだけの力(証拠金)が、自分にもあると気付いた。

 そして、僕が次に据えるべき目標は「変革断行で成果を出す」ことだと、薄々感じている。

 山田宏哉記

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