ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3350)

 与沢翼(著)『秒速で1億円稼ぐ条件』を読む

 ネオヒルズ族として著名な与沢翼氏が、自身のブログで、経営するフリーエージェントスタイルが資金ショートしたことを報告していた。

ご報告
http://ameblo.jp/yozawa-blog/entry-11834514071.html

 上記ブログによると「既にフェラーリ、ロールスロイス、ベントレー3台を売却し、住宅なども全て解約しております」「ロールスロイスを売った時、自分の中で、これまで絶対に正しいと考えていた価値観が雪崩のように崩壊していきました」とのことだ。

 まさに「転落」だが、普通の日本人の気持ちを代弁すれば、「ざまあみろ」の一語に尽きるだろう。

 ホリエモンが逮捕された時と同様、「汗水垂らして働くのが正しい」と感じた人もいると思う。

 与沢氏の転落を記念して、僕は与沢氏の著書『秒速で1億円稼ぐ条件』(フォレスト出版)を読んだ。

 いまや散々な評価の著者で、タイトルもいかがわしさ満点だ。だが、フェアに評価すれば、意外にも面白かった。情報価値の高い記述が結構含まれている。

 例えば、以下のような記述だ。

"バラエティ番組で新しい商品が出てきたり、新しい芸人が出てきたりしたときに、そこで使われた新しいワードを含んだ記事をブログに書くと、とてつもないPVが取れるということを知った。"(P171)

 商売で成功している人は、TV番組を有効活用している場合が多い。2週間先までの番組表を予め入手して、番組の特集によって、商品の仕入れを変えたりする。

 人気番組で「納豆ダイエット」の特集があるとわかっているなら、予め納豆を発注して、仕込んでおくのが賢明だ。

"なぜ、ドラゴンクエストやWindows 95が発売初日から品薄状態になったかというと、商品の生産数を最初から控えめにしていたからだ。人は、手に入りにくいものを欲しがるところがある。「枯渇感」があると、それが需要に結びつくのだ。"(P187)

 この指摘は、非常に重要だ。

 あえて商品の供給量を絞ることで、希少感を演出し、店舗前に「行列」ができるようにする。これをマスメディアが取り上げれば、無料で広告宣伝ができる。

 この手法は、アップルが新型のiPhoneを発売する際にも使われている。

 "私も以前、ホリエモンにツイッターでからんだことがあった。ホリエモンは、何かイラッとすることを言われると、「この野郎、論破してやる」という意気込みで反論してくるところがあったからだ。"(P222)

 確かに、無名の人がソーシャルメディアで有名になるには「有名人に絡む」のが近道ではある(個人的には、無名人が宣伝目的で有名人に絡む行為は好きではない)。

 Twitterで見る限り、ホリエモンは結構親切なので(普通なら無視するコメントにも反応する)、「目立つためにホリエモンに絡む」というのは、割に合理的な行動ではあると思う。

 人間的な好き嫌いを一旦脇に置けば、与沢氏はかなり頭が良く、経営者としても優秀だったと見受けられる。少なくとも「認識や価値観を誤ったから、会社が資金ショートした」わけではないと思う。

 むしろ、与沢氏は性善説の側に立ち過ぎで、脇が甘い。本書によれば、以前経営していたアパレル会社の倒産の原因は、内部の人間の背任横領だった。

 今回も資金ショートでも、記事を読む範囲では、FX会社やカード決済会社で忽然とお金が消えているように見える。お金を持っていて、目立っている人には、「悪い人たち」が寄ってくるのは、世の常だ。

 日本のお金持ちは、世間の嫉妬や悪人への対策として、極力、目立たないようにしている。与沢氏の一件をみると、改めて、お金があっても、控え目な態度を取ることが大切だと思う。

 山田宏哉記

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2014.4.30 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ