ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3355)

 もし、世帯年収355万円で新築マンションを購入したら

 「世帯年収355万円 私たちマンション買っちゃいました!」という広告が話題になっていた。約2700万円の新築物件だが、果たして、この選択が合理的か考えてみたい。

 住宅の本体価格を2700万円、消費税を8%とし、税込み価格は2916万円とする。

 『おいくら万円?』によると、新築マンションの販売価格のうち、10-15%は、広告宣伝費として上乗せされた分とされている。

 大手不動産業者では、広告宣伝費が販売価格の30%に達することもある。ここでは、厳しく見積もって、30%を広告宣伝費としよう。

まず、このマンションの資産価値だが、消費税と広告宣伝費として上乗せされた分は、買った瞬間に「無価値」となる。

 従って、この新築マンションは、買った瞬間、1000万円ほど価値が下落して、1890万円の資産価値となる。つまり、いきなり年収3年分を溝に捨てることになる。

 当然ながら、住む期間が長くなるにつれて、資産価値は更に下がっていく。

 これに対して、住宅ローンを組んだ場合の支払い金額はいくらになるか。

 仮に、金利3%で2900万円の住宅ローンを組んで、毎年97万円ずつ、30年かけて支払うものとしよう。

 金利の累計金額は、驚くべきことに、1344万円となる。この金額は世帯年収の4年弱に相当する。

 従って、この事例では、1890万円の資産価値の物件に対して、累計で4260万円を支払うことになる。これは、どう考えても合理的な判断ではない。

 新築マンションの売却価格は、10年後で当初の販売価格の3-5割とされているようだ。2700万円の新築マンションを買って、10年後に売ると、810-1350万円にしかならない。

 2900万円の住宅ローンを借りて、失業などで家を売却すると、1550万円-2090万円の借金だけが残る。無事に完済できたとしても、おおよそ年収7年分を溝に捨てることになる。

 世帯年収355万円で新築マンションを購入するなら、毎日、スーパーのチラシを見比べて、数十円、数百円の節約に務めることが必須だろう。

 それでも、住宅ローンを組んで、「広告宣伝費が3割の新築マンション」を高値掴みしたら、全ての節約が無駄になる。その上、自己破産につながりかねない大損失となる。

 日本ではなぜか、こういう大切な話が殆どされていない。

 件の広告については、「世帯年収355万円で買うのが論外」というのが一般的な反応だろう。

 しかし、経済合理的に考えれば、住宅ローンを組んで、新築マンションを買うこと自体が、詐欺同然の話で、そもそも論外なのである。

 山田宏哉記

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