ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3356)

 決着:ネットショップVSリアル店舗

 ネットショップとリアル店舗の運営のどちらかをするとしたら、果たしてどちらが良いだろうか。

 これまで僕は、ネットショップが有利だとは考えつつも、「一長一短」だと思っていた。

 だが、この度、伊東ゆう(著)『万引きGメンは見た!』(河出書房新社)を読んで、万引き問題の重要性に気付き、僕は完全に認識を改めた。

 警視庁の推計によると、2009年の小売業事業所における万引き被害総額は4615億円とされているようだ。判明していない分を含めれば、もっと多いだろう。

 日本の小売業界の市場規模は、約50兆円なので、仮に被害額が4615億円だとしても、単純計算で約1%が万引きで消えることになる。しかも、小売の売上高純利益率は約2%なので、万引問題を考慮すると、リアル店舗の小売業で利益を出すのは至難の技だ。

 街の書店が減った原因のひとつにも、「万引倒産」があるようだ。

 だが、万引き対策は容易ではない。

 『万引きGメンは見た!』にも記載があるが、決して、「誤認」してはいけないからだ。万引き対策は必要だが、仮に一般客を万引き犯と誤認すれば、社長が土下座するレベルの重大事態になる。

 中学時代、近所の古本屋の店主が、僕の同級生のグループを万引き犯と誤認する事件があった。噂はすぐに広がり、そのグループの生徒たちは古本屋に嫌がらせの電話をかけまくった。万引き誤認事件が原因かは不明だが、間もなく、その古本屋は閉店した。

 確かに、その古本屋の店主に同情の余地はある。毎日、万引き被害に悩まされていれば、「犯人を捕まえたい」と思うだろうし、ムシャクシャもするだろう。だが、たった万引き犯の摘発は、たった一度の誤認で、「一発アウト」の世界だ。

 それを肝に命じていなかった店主は、やはり甘かったと思う。

 リアル店舗を運営するなら、利益を確保するため、万引き犯を摘発し、警察に通報し、彼らを「前科持ちの犯罪者」に突き落とす覚悟が必要だと思う。たとえ相手が妊婦や老人、障害者や孤児院の児童などであっても。

 これは精神的に厳しい。

 しかも、以前は万引き犯を捕まえるために、犯人にローキックや膝蹴り、投げ技などの攻撃を加えるのは警察に黙認されていたが、最近は、これをやると、逆に攻撃した方が逮捕されてしまうようだ。

 更に、万引き犯の中には、外国人窃盗団のような、本当に「危ない連中」もいる。万引き対策を貫徹するためには、但し、こういう「危ない連中」にも断固立ち向かう必要がある。

 但し、凶器を持った外国人窃盗団などに素手で立ち向かうのは、ハイリスク・ローリターンで、全く割に合わないと思う。

 逆上した万引き犯に、ナイフで急所をひと突きされるだけで、人生は終わりである。『万引きGメンは見た!』にも、ナイフで襲い掛かってくる万引き犯が登場する。

 結論めいたことを言えば、商売をするなら、万引き対策をすること自体、避けるべきだと思う。

 万引き対策は、割に合わず、人間不信にも陥りかねない。もちろん、「万引きされ放題」では商売にならないから、ネットショップのように、構造的に万引きができない事業モデルにすべきだと僕は思う。

 貧しい人が増え、物価と消費税率が上がれば、自ずと「万引きのインセンティブ」は高くなってしまう。望ましい未来ではないが、万引きは、これからも増えるだろう。

 リアル店舗の小売であれば、結局、万引き関連の損失とコストを、商品価格に転嫁するか、従業員の労働条件切り下げでカバーするしかない。

 万引き問題の根が深い以上、自分で商売をやるなら、小売のリアル店舗運営は、賃料などの固定費や在庫管理などと並んで、ネットショップにはない、大きなリスク要因を抱えることになる。

 少なくとも、自分でやるなら、ネットショップVSリアル店舗は、ネットショップに軍配を上げることで決着だ。

 山田宏哉記

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2014.5.11 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ