ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3360)

 ブラック企業が消えない本当の理由

 薄給激務で労働条件が悪かったり、労働基準法に違反している「ブラック企業」が社会問題になって久しい。

 特にハンバーガーショップや牛丼屋、餃子屋、家電量販店や衣料品量販店、格安居酒屋チェーンなどの企業は、ブラック企業の代名詞になっている。

 就職活動をする学生にとっては、うっかりブラック企業に入社しないことが、最優先課題のひとつだろう。

 余談だが、学生時代、僕が日雇い派遣をやっていた時、某衣料量販店の衣類は、千葉の船橋あたりの港で荷揚げされて、日雇い派遣のアルバイトが倉庫内で仕分けしていた。

 この現場は他の現場と比べて労働条件が悪くて、日雇い派遣のアルバイトにも嫌われていた。今でも、某衣料量販店の労働条件の悪さは有名だ。

 本気で「ブラック企業は許せない」と考えているなら、僕たちはハンバーガーショップや牛丼屋、餃子屋、100円ショップ、家電量販店や衣料品量販店、格安居酒屋チェーンなどを、客として利用すべきではない。しかし、これらの店はむしろ繁盛している。

 消費者が、便利なサービスを低価格で利用する裏では、サービスを提供する側が、低賃金で長時間労働をしていることが多い。

 以前、渡邉美樹氏の著書を読んだ時、「ワタミでは、ビール一杯の利益は\30」と書いてあって驚いた。ビールを一杯売って利益が\30だと、理不尽な要求をする客や悪質なクレーマーの対応をしていると、事業として、全く割に合わなくなってしまう。

 確かに、ハンバーガーショップの店長が名ばかり管理職にされて、薄給激務で過労死するような事件が起きれば、確かに僕たちは心を痛める。しかし、だからと言って、消費者は\100のホットコーヒーでハンバーガーショップに長居するような習慣を改めたりはしない。

 消費者は、薄給激務の牛丼屋の店員に同情することはあっても、店員の労働条件改善のために、牛丼が一杯\300から\1,000に値上げされるのは許せない。

 某衣料量販店の服を着て、格安のハンバーガーをかじりながら、「ブラック企業は許せない」と言うのは、矛盾に満ちた言動である。

 消費者として、ブラック企業を利用することに矛盾や罪悪感を感じずに済むのは、「強欲な経営者が悪い」と決め付けて、自分には関係ない話だと考えるからだろう。

 このような事情を考慮すると、日本で生活する上での経済合理的な選択は、労働条件の良い企業に勤める一方、客としてブラック企業を徹底利用することだ。

 消費者にとって、牛丼屋の店員の労働条件はあくまで他人事だが、牛丼の値段は自分の生活に直結する。優先度の違いは明白だ。

 このような構造があるので、ブラック企業は簡単にはなくならない。

 つまり本音では、消費者はブラック企業を応援しているのだ。少なくとも、小売や飲食業界の「ブラック企業」は、消費者から見ると、「商品を格安で販売する優良企業」であることが多い。

 これこそ、ブラック企業が消えない本質的な理由である。

 山田宏哉記

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2014.5.31 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ