ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3362)

 「見世物小屋」としての貧困問題

 小田桐誠(著)『NHKはなぜ金持ちなのか?』(双葉社)に、ちょっと驚きの数字が掲載されていた。

 "職員の給与は、2012年の国会審議の過程で、41歳の平均年収が1185万円(手当込1780万円)であることが明らかになった。"(P7)

 周知の通り、NHKは、「貧困もの」の報道番組を企画することが多い。

 ワーキング・プアや生活保護、失業者やホームレス、無縁社会、女性の貧困、戸籍のない子どもなど、貧困系の問題で、NHKの番組が拡散機能を果たしたテーマは多々ある。

 職員の平均年収が約1200万円あるのに、「貧困もの」の番組に力を入れる真意は何なのか。「社会的使命」と言えば、聞こえは良いが、果たして、本当にそういうものだろうか。

 実生活でも時々する話だが、生活保護やワーキングプア、ネットカフェ難民などに関する報道やコンテンツは、実は、困窮した当事者が見るためのものではない。比較的豊かな人が「自分の勝利」を味わうために見るものだ。

 貧困問題の報道は、本質的に「現代の見世物小屋」だと思う。「奇人・変人ショー」ほど露骨ではないが、「こんな貧乏な人がいます!」と見世物にしている。

 NHKの貧困番組には、次から次へと、「極端な貧乏人」が登場するが、これは見世物小屋だと思えば、納得がいく。

 ボランティア活動を例に考えても、よくわかる。

 ボランティアが無償なのは当然で、なぜなら、自分よりも不幸な人の手助けをするのは、それ自体が大きな報酬だからだ。

 無償のボランティアで「お金持ちの豪邸の庭掃除」を募集しても、応募者は集まらないだろう。ボランティアは、「自分よりも不幸な人」を対象にするのが必須の条件で、そうでなければ、自尊心が満たされない。

 ボランティアの感想として、「むしろ自分が救われた」という話があるが、この「救済」こそ、ボランティアの報酬の本質だと僕は思う。「恵まれない人々」を手助けすることにより、自分が必要とされる実感と自身の恵まれた環境を味わうことができる。

 この実感があれば、人は無償でも奉仕できる。

 強者の立場から、格差や貧困、差別の問題を考えるのは、自尊心が満たされる娯楽であり、これは正直に認める必要があると思う。

 僕自身、浪人時代は、自尊心が満たされず、「日本人としての誇り」みたいな本が好きだったが、大学に合格した後、急に「日本人としての誇り」は急速に薄れ、「格差問題」に関心が移った。

 いずれにせよ、「社会的使命」の名の下に、「見世物小屋」に貧乏人を並べて、高みから眺めるのは、最高の娯楽だと思う。

 但し、偽善であろうと、なかろうと、世の中に役立つ成果を出せれば、動機は関係ない。

 そもそも、報道は「他人の不幸」で溢れている。「他人の不幸」を報道することは、マスメディアに求められる基本的な役割のひとつだ。

 「他人の不幸は蜜の味」と感じる群集心理に答えるからこそ、報道は商売として成立するのだ。

 実際に貧困問題の解決に役立つなら、貧困問題を面白半分に「見世物小屋」として報道するのは、大いに結構だ。

 山田宏哉記

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2014.5.31 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ