ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3364)

 「憧れの仕事」をする上での注意点

 学生にとっての「憧れの仕事」と言えば、おそらく「考える仕事」あるいは「クリエイティブな仕事」となるだろう。

 逐一、具体的な職種を列挙することはしないが、「憧れの仕事」でイメージされる職種に、さほど大きな違いはないと思う。

 仮に、学生が現在の僕の仕事を見たら、もしかしたら、「憧れの仕事」に見えるかもしれない。

 しかし、僕はいきなり最初から、「憧れの仕事」に就くことを勧めない。

 組織内での人間関係と、仕事を進める上での微妙な舵取りが、非常に難しいからだ。

 その上、仕事の世界では「実績」がモノを言う。ただでさえ難しいのに、実績に欠ける新人が担当するのでは、更に難度が高くなる。

 なぜ、組織内で「憧れの仕事」をするのは難しいのか。

 それは、世の中には、「憧れの仕事」とは無縁の業界や職種で、生活のために働いている人がたくさんいるからだ。むしろ、そういう人の方が多数派かもしれない。

 「考える仕事」や「クリエイティブな仕事」をする人というのは、黙々とルーティンワークをする人からすれば、それだけで目障りなことだ。だから、「憧れの仕事」をする人は、他の職種以上に、厳しく成果を問われる。若手社員なら尚更だ。

 単純な話、毎日、生活のために工場で製造ラインに立つ人が見ても、納得するだけの成果を出さなければならないのだ。

 組織の中で「憧れの仕事」をするなら、まず、このことを忘れてはいけない。このことを忘れると、痛い目に合う。

 「俺様はクリエイティブなノマドワーカー」みたいな勘違い社員が、ロクな成果を出していなかったら、普通の社員は怒る。

 自分たちが汗水垂らして稼いだ金で、こんな奴を養っているのかと思うと、勤労意欲も下がってしまう。組織としては、速やかに勘違い社員の担当を変える必要がある。

 「憧れの仕事」をする人にとっては厳しいが、組織を公平に運用するためには、このような処置が必要になる。

 現場で働く人たちから、「給料泥棒」と思われる程度の成果しか出せなければ、遅かれ早かれ、「憧れの仕事」を続けることはできなくなる。

 「考える仕事」をするにしても、「クリエイティブな仕事」をするにしても、僕はやはり、現場での下積み経験が必要だと思う。組織の中で、いわば底辺からキャリアを始めることは、いい仕事をする上で、非常に大切なことだ。

 企画をするにしても、アイディアの源泉は現場にある。

 組織で働く上では、優れたアイディアを出すことより、自分のアイディアを組織の戦略に組み込んだり、現場の支持を得て、実行に移すことの方が、遥かに難しい。

 そして、このような機微を身体で掴むためには、どうしても、一定期間の実務経験が必要になる。

 ノルマに追われて顧客先を回っている営業職や、工場の製造ラインで汗を流す工員から、「お前は、報酬以上の仕事をしているのか」と問われた時、自信を持って、「イエス」と言い切れるか。

 個人的には、ここで「イエス」と言い切れる人以外には、「憧れの仕事」は勧められない。

 山田宏哉記

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