ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3365)

 「憧れの仕事」をする者の義務

 世の中にある「憧れの仕事」の枠は限られている。

 誰もが「憧れの仕事」に就けるわけではない以上、「憧れの仕事」を手にするためには、他人との競争に勝つことが必要になる。

 このこと自体を批判するつもりはないが、競争を勝ち抜いて「憧れの仕事」に就いた者は、競争に敗れた敗者の存在を忘れてはいけないと思う。

 「憧れの職業」の代表例として、プロのサッカー選手を例に考えてみたい。

 例えば、プロのサッカー選手を目指す若者が2人いるとしよう。ひとりは望み通り、プロのサッカー選手になり、もうひとりは挫折し、トイレ清掃員になるとする。

 サッカーの実力差が僅かしかないのに、片方がプロサッカー選手、もう片方がトイレ清掃員となったら、敗者は悔やんでも、悔み切れないだろう。

 これはプロサッカー選手に限った話ではなく、「憧れの仕事」をする者全般に当てはまる。他人とのポジション争いで、「辛勝」するのは、相手に未練が残ってしまうので、極力、避けるべきだ。

 だから、勝者は相手に未練が残るような勝ち方をしてはいけない。圧倒的な実力差を見せ付け、敗者に「自分には才能がない」と自覚させることが大切だ。

 必死の努力を重ねて、プロのサッカー選手を目指してきたのに、あと一歩で及ばず、トイレ清掃員の職に就かざるを得ないのは、本人にとっては、すぐには納得できないことだろう。

 それを納得させ、夢を諦めさせるのが、勝者として「憧れの仕事」を手にした者がすべきことである。

 敗者が夢を諦められるようにするのは、勝者が果たすべき義務だ。そして、夢を諦めた少年たちが納得するだけのパフォーマンスを示す必要がある。

 なぜか。「憧れの仕事」を目指す上では、「引き際」が重要だからだ。

 若い頃、「華やかな職業」に就くことを目指して、必死に努力することは、決して悪いことではない。悪いことではないが、才能のなさを自覚したなら、「引き際」が重要である。

 僕も一時期、サッカーや音楽、武術に本気で打ち込んだが、才能のなさを自覚して数年で手を引いた。早い段階で、「才能のなさ」に気付けて、良かったと思っている。

 一握りの勝者以外は、早い段階で「決定的敗北」を味わい、目を覚ますことが必要だと思う。それが、人生を踏み外さないための知恵だ。

 凡庸な言い方になってしまうが、他人との競争に勝ち抜いて、「憧れの仕事」に就いた人は、競争に敗れて挫折した人の分まで、頑張る義務がある。

 これを言うのはおこがましいが、僕自身、本音を言えば「勝者の義務」を自覚している。

 そして、この義務感があるからこそ、「憧れの仕事」を続ける資格が得られる。少なくとも僕は、そう思っている。

 山田宏哉記

【関連記事】
「憧れの仕事」をする上での注意点(2014.6.7)
僕がNHKオンデマンドを解約した理由(2014.5.24)
今、「普通の働き方」を考える(2014.5.24)
人と組織を変えるストレッチ・アサインメント(2014.5.24)
決着:ネットショップVSリアル店舗(2014.5.18)
もし、世帯年収355万円で新築マンションを購入したら (2014.5.11)
東京に住むのは合理的な判断か (2014.5.10)
シェアハウスに住むのは合理的な判断か (2014.5.6)
情報弱者のための家電量販店 (2014.5.2)
大物プロブロガーの誤算と敗因 (2014.3.22)
コストとリターンで学ぶ商売の基本 (2014.3.15)
自慢話をするなら、"迷惑料"を払うべし (2014.3.14)
大物プロブロガーが本当に伝えたいたった1つのこと (2014.3.4)
時間を売るポジションと人材マーケットの論理(2014.3.1)
有料メルマガにみるドヤ顔ノマドの限界(2014.2.24)
「雇用のミスマッチ」を考える(2014.2.22)
「勝ちが勝ちを呼ぶ、負けが負けを呼ぶ」という構造(2014.2.20)
なぜ、会議に貢献できないのか(2014.2.13)
出張で成果を出す(2014.2.10)
プロジェクトで成果を出す(2014.1.25)
長時間残業が減らない本当の理由(2014.1.11)
仕事がなくて暇な会社員(2013.6.30)
「上司に相談します」が口癖の担当者(2014.2.1)
個人主義者は会社勤めできるか(2014.1.26)
日雇い派遣に学ぶプロジェクトの本質(2014.1.18)
誰が"面倒な雑用"をするべきか(2013.12.30)
タクシーに未来はあるか -業界復活の切り札-(2013.12.21)
TV電話が普及しない本当の理由(2013.12.7)
就職活動の勝敗は10歳の頃に決まっている(2013.10.25)
『ちびまる子ちゃん』で学ぶ「教室内カースト」(2013.10.20)
なぜ、日本人の7割には中学レベルの知識もないのか(2013.9.22)
勤労の美徳と資本主義の強欲 (2013.9.21)
ウェブへの上場と不特定多数による評価 (2013.9.16)
仕掛けと手仕舞いの仕事論 (2013.8.31)
"この世にいらない人間"と動物的本能の暴走 (2013.8.20)
人間的魅力の効用と限界 (2013.7.28)
勤勉という美徳の終わり(2013.6.30)
勉強で得られる知識は、価値が低い(2013.6.22)
仕事が好きな人、嫌いな人(2013.6.1)
仕事に"専門的な知識と能力"は必要か(2013.4.27)
ビジネスでは、あまり努力しない方が良い理由(2013.4.20)
誰が「腐った人材」を養うのか(2013.4.13)
「パンを分け合う仲間」としての会社(2013.3.30)
なぜ、あの人は「本を読むバカ」なのか(2013.3.26)
「やればできる」の仕事論(2013.3.23)
なぜ、ユニクロの離職率は高いのか(2013.3.16)
若者よ、貯金は止めた方が良い(2013.3.12)
英語公用語化の真意(2013.3.9)
薄給の時代 、副業の損得勘定(2013.3.2)
株で勝つのが難しい理由 (2013.3.2)
残業を良しとする"村の論理" (2013.2.24)
お金を稼ぐ力、組織を泳ぐ力(2013.2.16)
「みんな」という名の不審人物(2013.2.9)
リスクヘッジとしての株式投資(2013.2.2)
勤労の国の幸福なサラリーマンたち (2013.1.27)
公務員の"駆け込み退職"騒動の本質(2013.1.26)
株式投資の「究極の目標」とは何か(2013.1.23)
シャープ株の売買で気付いたこと(2013.1.17)
"試練の場"としての株式投資(2013.1.14)
中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』覚書(2013.1.4)
読書の費用を回収できるか(2013.1.4)
いかに「読むべき本」を確保するか(2013.1.4)
"紙本主義"の終わりとアマゾンのキンドル生態圏(2013.1.1)
信仰告白のビジネスモデル (2012.12.29)
iPhoneの防水ケースと家電量販店の終わり(2012.12.26)
なぜ、デートでサイゼリヤに行ってはいけないのか?
(2012.12.22)
ペニーオークション詐欺の教訓(2012.12.22)
汗で稼いだ一万円、投資で稼いだ一万円(2012.12.19)
実務に活かす株式投資(2012.12.15)
アウトソーシング時代の働き方(2012.12.8)
「飽きないこと」を仕事にする(2012.12.2)
ビジネスに活かす優先的選択(2012.11.27)
もしも世界が男女10人ずつの高校の教室だったら
(2012.11.25)
"ホームレス転落"という悪夢 (2012.11.24)
映画『シルク・ドゥ・ソレイユ』に学ぶ人材配置 (2012.11.18)
シュートを打つ人、パスに逃げる人 (2012.11.17)
若さゆえの飢餓感 (2012.11.17)
動物王国としての実社会 (2012.11.11)
人生を語る不誠実さ (2012.11.11)
映画『009 RE:CYBORG』覚書(2012.11.4)
なぜ、経歴を詐称するのか(2012.11.3)
愛は地球を救えない(2012.10.24)
労働貧困層と生活保護(2012.10.22)
ルサンチマンのある人生(2012.10.18)
世界は"不本意な職業"で溢れている(2012.10.15)
不本意な職業を受け入れる(2012.10.13)
僕たちは「格差社会」を望んだ(2012.9.24)
「人間好き」のファシズム (2012.9.17)
強者はデモに参加するか(2012.9.15)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)



2014.6.3 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ