ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3371)

 人生を守る「損切り」の断行

 藤原宏美, 関水徹平(著)『独身・無職者のリアル』(扶桑社新書) の中に悲惨な事例が記載されていた。

 「公務員試験に6年連続で落ち続けて、ショックで4年間、引きこもりになってしまった」という男性だ。これで大学卒業後の10年が、「職歴なし」になってしまったというわけだ。

 この男性は、怠けていていたわけではない。毎日4〜8時間、公務員試験対策の勉強をしていたそうだ。しかし、6年連続で不採用。

 改めて僕が言う必要もないが、職業生活を歩む上で、20代から30代にかけての時期は、最も重要な時期だ。実務能力も、この時期の過ごし方で決まると言って良い。

 今更言っても遅いが、その時期を「公務員対策の勉強と引きこもり」で空費するのは、キャリアの上では、致命的と言ってもいいほどだ。

 気の毒ではあるが、これは本人の判断ミスも大きいだろう。

 この公務員試験に執着して、人生を棒に振った若者は、おそらく「これまでに費やした時間と労力が無駄になる」が故に、途中から、引くに引けなくなったのだと思う。

 気持ちはわかるが、数年を無駄にすることを惜しんだために、より大きな人生の損失を招くことになった。

 最悪でも、「2年連続不採用」または「3年連続不採用」の時点で、公務員試験対策に費やした時間と労力は、「損切り」をして、他に働ける場所で働くべきだったと僕は思う。

 「損切り」とは、投資用語で、誤ったポジションを取ってしまった時、損失額をそれ以上拡大させないために、投げ売りして、損失金額を確定させることだ。

 既に注ぎ込んだ時間や労力、金銭は「サンクコスト」と呼ばれる。サンクコストは、もう戻らない。

 良い意思決定をするためには、「サンクコストを考えない」のが大原則だ。数年間の労力を無駄にしたくないばかりに、今後の人生を棒に振るのは、本末転倒としか言いようがない。

JPOPの歌詞を書くなら、「夢を諦めないで」だが、現実問題として、物事にはタイムリミットがある。

 「努力すれば、手が届く」のか、「努力しても、手が届かない」のか。競争率の高い職業を目指す若者にとって、最も重要なことは、この見極めだと思う。自惚れすぎてはいけないが、卑屈になってもいけない。ハッキリ言って、この見極めは非常に難しい。

 見極めは難しいが、叶う見込みのない目標に固執すると、人生全体を棒に振るリスクが高まる。「努力しても、手が届かない」と気付いたら、速やかに「損切り」し、その道から撤退することが重要だ。

 これは職業選択の文脈だけでなく、恋愛でも同じことが言える。

 誤った判断をしたなら、そのために注ぎ込んだ時間や労力は、潔く諦めるべきだ。

 もちろん、判断を間違わないことが理想的だが、人間なので、それは難しい。大切なのは、誤った判断をしたとしても、人生を棒に振る前に、「損切り」を断行することなのだ。

公務員試験に6年連続で落ち続けた男性は、身をもって、そのことを教えてくれた。

 山田宏哉記

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2014.6.13 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ