ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3376)

 勉強に逃げるな 

 「試験前になると、部屋の掃除をしたくなる」という現象がある。学校に通っている生徒には、お馴染みのものだ。

 もちろん、試験前に部屋の掃除をしても、直接的に試験の得点が上がることはない。

 実務家が「まずは勉強」と言うのは、学生が「まずは部屋の掃除」と言うのと変わらない。

 実社会で働き始めると、勉強をしたくなる人は、意外と多い。これは試験前に部屋の掃除をしたくなるのと、実は同じだ。

 目の前にある「今、解決すべき問題」から逃げるために、勉強するわけだ。

 もちろん、勉強も部屋の掃除もそれ自体は必要だが、どちらかと言えば、本業の課題解決の後や時間に余裕がある時にすることだ。

 働く人のための「お勉強」は、既にマーケットとして成立している。資格や語学などはわかりやすい例だが、専門書から自己啓発本に至るまで、「お勉強のための教材」は、幅広く用意されている。

 「教材」そのものが悪いわけではない。いけないのは、「勉強に逃げる人」の方だ。

 実社会で働き始めた頃、僕は勉強に逃げていた。仕事と勉強に打ち込む時間の合計が1日16時間になるよう、必死で勉強していた。しかし、際立った成果を出すことはできなかった。一見、真面目で勤勉に見えるが、自分に甘かった。

 今思えば、これは「勉強への逃避」だった。僕は「成果を出すために、他人と交渉すること」から逃げていた。例えば、苦手な人と話すのを避けて、ビジネス書を読んでいた。

 新人の頃、会議やミーティングに参加しても、貢献することができなかった。なぜか。理由は色々あるが、最大の理由は「勉強に逃げていた」ことだと思う。

 例えば、「他人との交渉」が苦手なら、意識的に「他人との交渉」の機会と回数を増やすことが必要だ。苦手なことでも、実地訓練を重ねれば上達する。

 しかし、僕はこういう時、「交渉術」の本を読んで勉強するタイプだった。僕の弱点は「勉強への逃避」だった。

 成果を出せなかった僕は、「勉強が役立たない作業」に専念することになった。見栄を張って、ビジネス書や日経新聞を読む必要もなくなった。随分とプライドが傷付いたものだが、結果的にはこれが良かった。

 同時期、僕は震災ボランティアに熱中した。被災地での瓦礫撤去も、今思えば、「お勉強」が通用しない世界だった。おかげで、「今、解決すべき問題」に対して、「自分の頭で考える」ことと「手持ちの材料で何とかする」能力を鍛えることができた。

 ビジネスに関することは、勉強しても「畳の上の水練」にしかならないことが多い。勉強をするのは精神的に楽なので、社会人はついつい勉強に逃げたくなる。

 だからこそ僕は、声を大にして「勉強に逃げるな」と言いたい。

 山田宏哉記

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2014.6.13 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ