ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3377)

 なぜ、コンテンツは売れなくなったのか

 実生活で「なぜ、コンテンツは売れなくなったのか」という話をする機会があった。

 理由を一言で言えば、「人々の要求水準が上がったから」だと思う。僕も近頃、コンテンツにお金を払うのは「もったいない」と感じることが増えた。

 現代人の感覚を代弁すれば、スカイプの英会話学校にお金を払うのは納得するが、英語学習のマニュアル本にお金を払うのは、納得できないと思う。

 あるいは、文章添削のサービスにお金を払うのは納得するが、文書作成のマニュアル本にお金を払うのは、納得できないと思う。

 肝になっているのは、「商品に手間をかけているか」と「自分が尊重されているか」である。

 スカイプの英会話教室は、提供側に手間がかかり、生徒は自分が尊重されていると実感できる。一方、英語学習のマニュアルは、コピー可能で手間がかからず、読み手を個人として尊重することもない。

 コンテンツは、コピーが可能なので、量産するのに手間とコストがほとんどかからない。顧客を個人として尊重する必要もない。情報の流れも一方通行だ。

 宅配業者であれば、顧客の荷物を、指定された配送先に届けている。荷物の内容も、配送先の住所も、ひとりひとり違う。そういう個別事情に丁寧に応ている。だからこそ、宅配業者には気持ち良く配送料を払うことができる。

 コンテンツ販売には、こういう誠意と丁寧さが欠落している。他のサービス業と比較すると、コンテンツは顧客の要望に応えておらず、明らかに「手抜き商品」なのだ。

 コンテンツの販売者は、「一生懸命、コンテンツを作っている」と強弁するだろう。しかしそれは、顧客の要望に応えているわけではない。ガラパゴス端末の機能向上に血筋を上げるようなものだ。

 コピー可能な商品を、顧客を十把一絡げにして配ることそのものが、他業種と比較すると不誠実なのだ。

 僕は、「今、私が知るべき情報」を知るべきタイミングで届けてくれるなら、コンテンツにお金を払う価値はあると思っている。

 だが、「一般大衆が知るべき情報」とやらを、提供者都合のタイミングで流されても、そういう顧客無視のコンテンツにお金を払う価値はないと思う。

 「一般大衆が知るべき情報」があるにしても、なぜ、お金を払ってまで「一般大衆が知るべき情報」を入手する必要があるのか。他の人が知っている情報を仕入れたところで、何の優位性もない。

 コンテンツ業界以外の人は、顧客の要望に応えるべく、事業やサービスを改良してきたわけだ。コンテンツ業界以外の人にとっては、顧客のひとりひとりに合わせたサービスが常識になっている。

 ところが、コンテンツ業界だけは、顧客を無視して、「一般大衆が知るべき情報」に固執している。

 理髪店のメニューが、「一般大衆用の髪型」の一種類しかなかったら、顧客無視もいいところだろう。ところが、コンテンツの販売業者は「最近の若者は、意識が低いので、一般大衆用の髪型にお金を払わない」などと勘違いしている。

 そうではない。コピー可能な既成品の価値そのものが、大幅に下落しているのだ。

 現代においては、「一般大衆が知るべき情報」のパッケージ品よりも、ハンバーガーショップの店員が笑顔で対応してくれることの方が、ずっと価値がある。

 この点を理解しない限り、コンテンツの売上は、沈下の一途を辿ることだろう。

 山田宏哉記

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2014.6.13 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ