ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3378)

 自意識過剰に付ける薬

 あまり他人のことは言えないが、「自意識過剰は困ったものだ」とよく感じるようになった。

 学生時代の僕は、自意識過剰でトラブルメーカーの側にいた。そして、皮肉なことに、、今は「自意識過剰な人は困ったものだ」と嘆く側にいる。

 日雇い派遣や掃除屋をやっていた頃は、自分が社会の底辺にいるような気がした。世の中を逆恨みして、「俺様の凄さ」をアピールせずにはいられなかった。

 既得権益の上で、惰眠を貪る連中ばかりがいい思いをして、優秀な若者が辛酸を嘗めている。僕は、被害者意識に満ち溢れていた。

 そもそも、自意識過剰になるのは、社会環境などから「自分は存在価値のない人間ではないか」と感じさせられるからだと思う。

 惨めな就職先、低い年収、単調な単純作業など、自分の存在価値を毀損するような環境にあると、僕たちは「俺様の凄さ」をアピールしたくなる。

 若者が「戦争」を望む気持ちは、僕にもわかった。

 その後、僕は具体的な成果を積み重ね、収入が増えた。生活水準も向上した。そのためか、不思議なことに、あまり世の中を逆恨みする必要がなくなった。

 また、仕事の実績があり、高く評価されていれば、わざわざ「俺様の凄さ」をアピールする必要はないことに気付いた。

 自意識過剰は、必ずしも本人の性格だけの問題ではない。存在価値を否定された社会的弱者は、おのずと自意識過剰になる構造がある。本人に「自意識過剰はいけません」と注意するのは、あまり意味がないと思う。

 更に言うと、個人の性格は、自分が置かれた社会的境遇に左右される面が大きい。例えば、家が貧乏で、学校の成績が悪ければ、自意識過剰になり、世の中を逆恨みすることになりがちだ。

 毎年、成人式の日には、地方のヤンキーがバカ騒ぎをしたりして、ニュースになったりする。地方のヤンキーが自意識過剰になるのも、彼らが置かれた境遇を考慮すれば、よく理解できる。

 自意識過剰なトラブルメーカーの心情を読み取るのは、それほど難しいことではない。彼らは、ヒエラルキーの下の方にいる負け組であり、自尊心を保つために、「俺様の凄さ」をアピールせざるを得ない立場に置かれている。要は、劣等感の塊なのだ。

 「俺様の凄さ」をアピールするのは、暴走族が騒音を出したり、地方のヤンキーが成人式で騒ぐのと、本質的には変わらない。本人の評価と評判を落とすだけである。

 それでは自意識過剰な人は、どうすれば良いのか。実は、「謙虚になれ」という助言は、間違っている。必要不可欠なのは、「勝利」を手にすることだ。

 逆説的だが、人が自意識過剰になるのは、広い意味での「敗北」を喫すからだ。学校の成績、運動神経、異性との関係、就職先や収入など、「人並み以下」の烙印を押されれば、どうしても自意識過剰になり、「俺様の凄さ」をアピールしたくなる。

 だからこそ、「勝利」が重要なのだ。勝者は「俺様の凄さ」をアピールする必要がない。余裕があるからこそ、謙虚に振る舞うことができる。

 自意識過剰な人は、わざわざ「謙虚になろう」などと思う必要はない。むしろ、「勝利」に集中することだ。

 「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という格言があるが、勝って勝って勝ちまくれば、自ずと謙虚さもついてくるものだ。

 山田宏哉記

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2014.7.14 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ