ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3381)

 勝敗を分ける「予感」の話

 押井守,岡部いさく(著)『戦争のリアル』の中で、押井氏が示唆的な発言をしていた。

 "押井――当たりそうな予感がしない兵器は当たらないと思う。僕も長年鉄砲を撃ってきてですね(笑)、ライフル構えたときに「このライフルは当たるぞ」という実感があるものはやっぱり使いやすいし、実際当たるんですよ。"(P127)

 "押井――戦争のリアリティの中身ってなんだと言ったら、「勝つ予感」のこと。勝つ予感がしない軍隊は、その時点で役に立たない。"(P101)

 一見すると、この話はメチャクチャである。物事の成否、更にはその後の人生を分ける決断をするにあたって、「予感」などという曖昧なものに頼っていいのか。

 この話は、パブリックな領域を判断する時と、プライベートな領域を判断する時で、事情が異なってくる。

 もちろん、他人を説得するのに「予感がする」では話にならない。だが、自分のことを決めるなら、「予感」で充分だと僕は考えている。

 あまり客観的な話にならないが、物事に取り組む時、「勝つ予感」がするか否かは、最重要の指標だと思う。

 「できる予感」がした仕事は、実際にできる。「閃く予感」がした時は、実際に閃く。そして、「勝つ予感」がした勝負は、実際に勝てることが多い。

 だから、僕は個人の生活においては、「予感」を物事の判断基準にしている。

 一口に予感と言っても、厳密には、全くの山勘というわけではない。無意識のうちに「これまでに積み重ねた知識と経験」に照らして、判断している。だから、僕の「予感」は、私的な範囲の事柄であれば、大方当たる。

 「予感」がまるで当たらない人は、「これまでに積み重ねた知識と経験」が不充分ではないか。

 僕は、「勝つ予感」がする勝負はするが、「勝つ予感」がしない勝負は極力避ける。「できる予感」がする仕事はするが、「できる予感」がしない勝負は極力しない。

 周囲からは、リスクを取っているように見えるからもしれないが、僕は実際には「予感」で選んでいる。

 例えば、僕の場合、コンビニ店員や建築現場の作業員などは「できる予感」が全くしない。だから、アルバイトでもしなかったし、就職先としても、考えなかった。

 他に、「できる予感」がする仕事があるのに、わざわざ「できる予感」がしない仕事を選ぶ必要はない。

 もっとも、実力向上とともに、「勝つ予感」や「できる予感」の範囲は広がっていく。

 以前は、「できる予感」や「勝つ予感」がしなかったことでも、実力向上により、「できる予感」「勝つ予感」が湧いてくることがある。その時こそ、挑戦するのにベストのタイミングだと僕は思う。

 もちろん、公共の領域のことを決める際は、「予感」では話にならない。客観的な材料が必要だ。

 しかし、「予感」とは、無意識のうちに「これまでに積み重ねた知識と経験」に照らして、迅速に判断することだ。自分が生きるためであれば、「予感」で物事を判断するのは、むしろ賢明な態度だと、僕は思う。

 山田宏哉記

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2014.7.23 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ