ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3394)

 経験年数の幻想と不平等な競争

 藤田晋(著)『藤田晋の仕事学』(日経BP社)で、意外と見過ごされている点が指摘されていた。

 "入社時、同期の間に力の差なんてないと思っていませんか。実はそれが、キャリアを積むうえでの間違いの第一歩なのです。「みんな最初は同じ」ではないのです。"(前掲書P50)

 本書によると、藤田氏が新卒でインテリジェンスで働き始めた頃、入社2ヶ月で営業成績で同期トップになったそうだ。

 この時、既に藤田氏は広告営業のアルバイトを2年間経験していた。そのため、同期からは「ずるい」と言われたそうだ。

 「入社時点で既に差が付いている」という話は、意外と重要だ。確かに、ビジネスの競争は、「ヨーイ、ドン」で始まるわけではない。

 僕もこのことを現在進行形で感じている。

 自分で言うのは気が引けるが、僕は「思っていたより、経験年数が短い」と言われることがある。どうも、「飲み込みが速い」と思われている節がある。

 但し、それは一面的な見方だと思う。

 僕も公式には、2008年の4月に就職して、働き始めたことになっている。現在、7年目だ。

 但し、僕がウェブサイトの運営を始めたのは2001年で、経験年数は13年になる。その間、ずっとアクセス解析と格闘しながら、訴求力のある表現と人間心理を追求してきた。その間、誹謗中傷や炎上とも戦ってきた。

 また、2年間、出版社で編集アルバイトを経験している。そのためか、一般のビジネスパーソンと比較すれば、校正や誤植の検出なども得意だ。

 実務経験は「思ってたより短い」と言われるが、その裏には「13年のウェブサイト運営と2年間の編集アルバイトのノウハウ蓄積」があるわけだ。

 更に、社会人としての「経験年数」は通常、「週5で1日8時間働く人」を想定している。

 僕の場合、ウェブサイトの運営や記事の執筆、読書や勉強の時間を含めると、この基準から大きく逸脱している。「経験年数3年」の想定より、投下している時間の絶対量が多いわけだ。

 だから例えば、特定の企業に入社して、そこから文書作成などの経験を積み始めて数年の人が、書き言葉に関して、僕と同じ土俵で戦えると言ったら、おそらくそれは無理だと思う。経験の場数と研鑽のために投下した時間に圧倒的な差があるからだ。

 「社会人経験3年」と言えば、その人の実力がどの程度のものか、大まかな想像が付くかもしれない。想像が付くのは「経験年数」によって、どの程度、実力が向上するか、暗黙のうちに了解しているからだ。

 しかし、それは幻想に過ぎない。

 同じ「経験年数3年」と言っても、厳しい環境で成果を連発してきた人と、社内ニートとして、座席に座っていただけの人では、実力に雲泥の差が生じる。しかも、社会人としてのスタート時点で、既に圧倒的な差が付いている。

 仮に僕が、経験年数の割に能力が高いように見えるとしたら、それはおそらく「飲み込みが速いから」ではない。単に、これまでに踏んだ場数が多く、ノウハウの蓄積があるからに過ぎない。

 あれは、プライベートの時間も言語表現の追求に注ぎ込んできたからこそ、できることなのだ。僕は主観的には、あまり物覚えが良くないと思っている。

 だから、仮に一緒に働いている方から、「山田には、"勤務時間外の活動"や"裏の経験年数"があってズルい。そもそも、スタート時点から違うじゃないか」と言われたら、「その通りです」と謝るしかない。

 山田宏哉記

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2014.8.29 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ