ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3395)

"腐った世の中"と"愚かな一般大衆"を見下すあなたへ

 あなたは「腐った世の中」を見下していないだろうか。「愚かな一般大衆」を馬鹿にしていないだろうか。

 もしそうなら、ひとつ予想をしたい。あなたは「自分は正当に評価されていない」と強い不遇感を持っているはずだ。

 「世の中は腐っている」と感じるのは、自尊心の防衛反応だと僕は考えている。自分が社会の底辺で這いつくばっている時、「世の中は公平だ。自分は勝負に負けて落ちぶれた」と、正直に認めるのは難しい。

 僕自身がそうだったが、「浮わついた世の中」や「軽薄な人間たち」を批判するのは、基本的に、他人の幸福が妬ましいからだ。自分が正当に評価されないことを、逆恨みしているわけだ。

 一見、公共の問題を論じているように見えるが、実は「俺様は凄い」とアピールしたいだけだったりする。小難しい理屈をこねていても、要はそういうことだ。

 「肉を食べると攻撃的になる」と主張する菜食主義者が、人一倍、攻撃的だったりする。その理由も、「自分は正当に評価されていない」という不遇感だ。だからこそ、世の中と一般大衆を逆恨みして、攻撃的になる。

 宗教家はよく「世界の滅亡」を予言する。これは、彼らの願望に他ならない。赤木智弘氏の「31歳フリーター。希望は、戦争。」と同じ願望だ。

 自分が社会の最底辺で這いつくばるくらいなら、隕石でも降って来て、他人の幸福が吹き飛ぶことを、深層心理では望んでいるのだ。率直に言って、「世界の滅亡」を予言する宗教家や預言者は、人間のクズである。

 僕が「悪意」に目覚めたのは、果たしていつのことか。

 明確に思い出すことはできないが、キッカケのひとつは中学校時代だったと思う。林間学校と修学旅行の夜、隣の男子グループの部屋には女子グループが来て、賑やかで楽しそうだった。しかし、僕たちの部屋には誰も来なかった。

 また、高校は男子校に通っていたので、共学校の生徒がワイワイ楽しそうにしていると、これまた気に食わなかった。こうして僕は「楽しそうにしている奴ら」を見下すようになった。

 「他人の幸福が妬ましいだけのクズ野郎」と言われれば、全くその通りだ。

 僕はずっと「腐った世の中」と「愚かな一般大衆」を見下してきた。「何様のつもりだ」という話だが、それが正しい態度だと思ってきた。でも、それは間違っていた。所詮、自尊心の防衛反応でしかなかった。

 このことに気付いたのは、「自分は正当に評価されていない」という不遇感が消えたからだ。世の中は理不尽で、人間は愚かかもしれないが、それを含めて、この世界を肯定できるようになった。

 「世の中は腐っている。一般大衆は愚かだ」とあなたは言う。

 確かにそうかもしれない。そうかもしれないが、実は世の中や一般大衆の問題ではなく、あなたの自尊心と不遇感の問題ではないのか。そのことを正直に問い直した方が良いと僕は思う。

 山田宏哉記

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