ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3412)

 自慢しても嫌われない条件

 「自慢をしたい」という衝動は、動物の本能に近いものだ。その一方、仕事であれ、日常生活であれ、「自慢」には細心の配慮が必要で、落とし穴のひとつと言える。

 向谷匡史(著)『人間関係「間合い」術』(草思社)でも、自慢を戒める記述がある。

"「人の不幸」が蜜の味なら「人の自慢」は苦虫の味ーーというのが、私たちである。だから人間関係術に長けた人は自慢をしない。自慢は嫉妬や反感を買うだけで、人間関係にマイナスになることを熟知しているからだ。"(前掲書P173)

 自慢はしたいが、嫌われたくはない。やや身勝手かもしれないが、そのためには、いくつか条件があると僕は思う。その条件について、考えてみたい。

1.他人の自慢話に寛容になる
2.成果と実績の自慢に限定する
3.自慢話を聞きたがっている相手に限定する
4.組織の中では、『私の成果』ではなく、『我々の成果』と言う
5.単なるストレス解消以外の目的を持つ

 項番1について。自慢話をするなら、他人の自慢話に寛容になる。他人の自慢話が嫌なら、自分も自慢話をしない。このバランスが大切だ。

 「自分の自慢話をするのは好きだが、他人の自慢話は許せない」という人は、「人間として論外」だ。こういう身勝手な人が嫌われることは、間違いない。

 項番2について。堂々と自慢しても許されるテーマは、基本的に「自分が成し遂げたこと」だけだと思う。家庭環境や国籍、有力者との繋がりなどは、本人の努力とは関係ない。この手の自慢をする人は、ただの「嫌な奴」だ。

 「収入」「能力」「ポジション」などの自慢は、「自分が成し遂げたこと」と言えないこともなく、微妙なラインだが、相手に「嫉妬を抱かせない」「劣等感を感じさせない」という基本を考慮すれば、控えた方が賢明だと思う。

 項番3について。うんざりしている相手に自慢話をしても、嫌われるだけだ。

 僕は日常生活では、あまり自慢話をしないように気を付けている。「普通の人は、僕の自慢話なんか聞きたくない」と考えている。僕の自慢話を聞きたい人は、「ウェブで読んでください」というスタンスを取っている。

 項番4について。組織で働く人が、露骨に「俺様の成果だ」とアピールするのは感心しない。裏方で支えてくれている人もいるはずだ。「我々の成果」と配慮した言い方をすれば、無用な反感も買わずに済む。

 項番5について。自慢話をするとストレス解消にはなるが、それだけを目的にするのは感心しない。「新しい仕事を取るため」とか「自分が適任であることを証明するため」など、基本的には、実績のアピールが必要な局面で使うようにしたい。

 厳しい条件だろうか。しかし、これはあくまで最低限の条件であって、この条件を満たして自慢しても、嫌われることはあると思う。

 他人が上手くいったことを、「面白くない」と感じるのは、ある程度、仕方がない。自分が社会の底辺を這いつくばっていたら、かつての同級生が社会の脚光を浴びても、素直には喜べないだろう。

 人間は、他人の幸福を妬み、他人の不幸を喜ぶ動物だ。池谷裕二氏の著書によると、他人の不幸を喜ぶ感情は、シャーデンフロイデと呼ばれ、脳の回路に組み込まれている。

 何かを自慢したくなった時は、以上のようなことを頭の片隅に置いておきたい。

 山田宏哉記

【関連記事】
先輩が後輩をいじめる本当の理由 (2014.10.5)
人生の先輩曰く「俺様はこんな仕事をやる人間じゃない」 (2014.10.2)
「俺様語り」からの卒業(2014.9.27)
「下積み10年」は正しかった(2014.9.23)
なぜ、俺様社員は転落したのか(2014.9.15)
「意識が高い人」とは、どういうことか(2014.9.13)
"腐った世の中"と"愚かな一般大衆"を見下すあなたへ(2014.9.1)
僕たちが生まれた時、世界はもう完成していた(2014.8.16) "寛容"は、教育と訓練の賜物である(2014.8.10)
炎上に宿る"異様な情熱"の正体(2014.8.8)
チームワークに逃げるな(2014.8.2)
「仲間」と認められる人、認められない人(2014.7.26)
「今、解決すべき問題」と実務という試練(2014.7.3)
大物プロブロガーの失敗に学ぶ仕事術(2014.6.28)
大物プロブロガーは、「お荷物社員」だった(2014.6.27)
スポーツ観戦の本質と人生を諦めた一般大衆(2014.6.21)
傲慢と謙虚についての誤解(2014.6.16)
なぜ、「嫉妬」を「義憤」にすり替えるのか(2014.6.13)
「憧れの仕事」をする者の義務(2014.6.9)
「憧れの仕事」をする上での注意点(2014.6.7)
僕がNHKオンデマンドを解約した理由(2014.5.24)
今、「普通の働き方」を考える(2014.5.24)
決着:ネットショップVSリアル店舗(2014.5.18)
もし、世帯年収355万円で新築マンションを購入したら (2014.5.11)
東京に住むのは合理的な判断か (2014.5.10)
シェアハウスに住むのは合理的な判断か (2014.5.6)
情報弱者のための家電量販店 (2014.5.2)
大物プロブロガーの誤算と敗因 (2014.3.22)
コストとリターンで学ぶ商売の基本 (2014.3.15)
自慢話をするなら、"迷惑料"を払うべし (2014.3.14)
大物プロブロガーが本当に伝えたいたった1つのこと (2014.3.4)
時間を売るポジションと人材マーケットの論理(2014.3.1)
有料メルマガにみるドヤ顔ノマドの限界(2014.2.24)
「雇用のミスマッチ」を考える(2014.2.22)
「勝ちが勝ちを呼ぶ、負けが負けを呼ぶ」という構造(2014.2.20)
なぜ、会議に貢献できないのか(2014.2.13)
出張で成果を出す(2014.2.10)
プロジェクトで成果を出す(2014.1.25)
長時間残業が減らない本当の理由(2014.1.11)
仕事がなくて暇な会社員(2013.6.30)
「上司に相談します」が口癖の担当者(2014.2.1)
個人主義者は会社勤めできるか(2014.1.26)
日雇い派遣に学ぶプロジェクトの本質(2014.1.18)
誰が"面倒な雑用"をするべきか(2013.12.30)
タクシーに未来はあるか -業界復活の切り札-(2013.12.21)
TV電話が普及しない本当の理由(2013.12.7)
就職活動の勝敗は10歳の頃に決まっている(2013.10.25)
『ちびまる子ちゃん』で学ぶ「教室内カースト」(2013.10.20)
なぜ、日本人の7割には中学レベルの知識もないのか(2013.9.22)
勤労の美徳と資本主義の強欲 (2013.9.21)
ウェブへの上場と不特定多数による評価 (2013.9.16)
仕掛けと手仕舞いの仕事論 (2013.8.31)
"この世にいらない人間"と動物的本能の暴走 (2013.8.20)
人間的魅力の効用と限界 (2013.7.28)
勤勉という美徳の終わり(2013.6.30)
勉強で得られる知識は、価値が低い(2013.6.22)
仕事が好きな人、嫌いな人(2013.6.1)
仕事に"専門的な知識と能力"は必要か(2013.4.27)
ビジネスでは、あまり努力しない方が良い理由(2013.4.20)
誰が「腐った人材」を養うのか(2013.4.13)
「パンを分け合う仲間」としての会社(2013.3.30)
なぜ、あの人は「本を読むバカ」なのか(2013.3.26)
「やればできる」の仕事論(2013.3.23)
なぜ、ユニクロの離職率は高いのか(2013.3.16)
若者よ、貯金は止めた方が良い(2013.3.12)
英語公用語化の真意(2013.3.9)
薄給の時代 、副業の損得勘定(2013.3.2)
株で勝つのが難しい理由 (2013.3.2)
残業を良しとする"村の論理" (2013.2.24)
お金を稼ぐ力、組織を泳ぐ力(2013.2.16)
「みんな」という名の不審人物(2013.2.9)
リスクヘッジとしての株式投資(2013.2.2)
勤労の国の幸福なサラリーマンたち (2013.1.27)
公務員の"駆け込み退職"騒動の本質(2013.1.26)
株式投資の「究極の目標」とは何か(2013.1.23)
シャープ株の売買で気付いたこと(2013.1.17)
"試練の場"としての株式投資(2013.1.14)
中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』覚書(2013.1.4)
読書の費用を回収できるか(2013.1.4)
いかに「読むべき本」を確保するか(2013.1.4)
"紙本主義"の終わりとアマゾンのキンドル生態圏(2013.1.1)
信仰告白のビジネスモデル (2012.12.29)
iPhoneの防水ケースと家電量販店の終わり(2012.12.26)
なぜ、デートでサイゼリヤに行ってはいけないのか?
(2012.12.22)
ペニーオークション詐欺の教訓(2012.12.22)
汗で稼いだ一万円、投資で稼いだ一万円(2012.12.19)
実務に活かす株式投資(2012.12.15)
アウトソーシング時代の働き方(2012.12.8)
「飽きないこと」を仕事にする(2012.12.2)
ビジネスに活かす優先的選択(2012.11.27)
もしも世界が男女10人ずつの高校の教室だったら
(2012.11.25)
"ホームレス転落"という悪夢 (2012.11.24)
映画『シルク・ドゥ・ソレイユ』に学ぶ人材配置 (2012.11.18)
シュートを打つ人、パスに逃げる人 (2012.11.17)
若さゆえの飢餓感 (2012.11.17)
動物王国としての実社会 (2012.11.11)
人生を語る不誠実さ (2012.11.11)
映画『009 RE:CYBORG』覚書(2012.11.4)
なぜ、経歴を詐称するのか(2012.11.3)
愛は地球を救えない(2012.10.24)
労働貧困層と生活保護(2012.10.22)
ルサンチマンのある人生(2012.10.18)
世界は"不本意な職業"で溢れている(2012.10.15)
不本意な職業を受け入れる(2012.10.13)
僕たちは「格差社会」を望んだ(2012.9.24)
「人間好き」のファシズム (2012.9.17)
強者はデモに参加するか(2012.9.15)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)



2014.10.11 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ