ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3417)

 今、"奴隷"たちに教えるべきこと

 国家は、その本質において、"奴隷"を必要とする。

 このことは、エジプトでピラミッドを建設していた頃から、現代に至るまで、一環して変わらない。「国民には勤労の義務がある」とは、要は「国家は"奴隷"を必要とする」ということだ。

 特に少子高齢化の日本にとって、どのように"奴隷"を確保するかが喫緊の課題となっている。

 移民の受け入れやロボットによる代替などの手段も考えられるが、やはり基本は自国民を"奴隷"として働かせることだろう。

 現在、日本の大学では、"奴隷"を養成するために、より「実践的な教育」への機運が高まっている。シェイクスピアや経営学を教えるのは止めて、会計ソフトや工作機械の使い方など習得させよ、というわけだ。

 結論から言えば、僕は大学で「最新鋭の工作機械の使い方」や「会計ソフトの使い方」を教えるのは、間違っていると思う。

 何も「大学は学問の場である」と言いたいわけではなく、実務経験のない学生に職業訓練を施しても、あまり効果を期待できないからだ。

 実務を覚えるなら、実際に働くのが一番で、実務経験のない若者に、教室内で「実践的な教育」を施しても、習得は不可能に近い。

 会計ソフトや工作機械の使い方を覚えても、技術の進歩に伴い、数年もすれば陳腐化する。大学でそんなことを教えるのは馬鹿げている。

 社会人になっても直接的に役立つことで、大学で教えることができることと言えば、語学、論理的思考、情報リテラシー、レポート作成、議論の作法、メンタルヘルス対策、保健体育、人間関係に関わる諸事などだろう。

 しかし、もっと直接的に役立つことがある。

 以前、鎌倉に行った時、人力車に乗る機会があった。男性スタッフが人力車を牽引して名所を練り歩きながら、観光案内をしてくれるサービスで、なかなか快適だった。

 今改めて思うのは、これからの日本で活躍できるのは、「観光地で人力車を牽引するような人材」ということだ。

 "奴隷"にとって、「役に立つ教育」と言うなら、大学では「人力車を引く訓練」をするのが良いだろう。基礎体力の向上にもなる。

 裕福な外国人観光客を相手に、観光地で「へい、お待ち」と威勢のいい声を上げ、法被姿で人力車を引っ張って外貨を稼ぐ。これぞ、"奴隷"のための「新しい働き方」だ。

 "奴隷"には、余計なことを教える必要はない。忠君愛国の精神で、人力車を引いて、せっせと税金を払うように調教すれば、それで充分だろう。

 山田宏哉記



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2014.10.26 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ