ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3429)

 読書の肝はリズムと精神衛生にあり

 実生活でこんな話をする機会があった。

 「本を読む上で僕が大切にしているのは、『生活のリズムを崩さないこと』。例えば、村上春樹や中島義道の本などは、人生に挫折した時に読むのは良いが、仕事が好調の時には避けるようにしている。」

 「『意味』を求めてしまうのは、物事が上手くいっていない時。好調な時は、『人生の意味』や『なぜ、働くのか』ということは、殊更、気にならないし、それで構わない。好調な時は、リズムの持続を優先し、成果を蓄積するのが得策。調子が狂う本を読むのはやめた方がいい。」

 僕は現在、組織の中で実務家として働き、それで生計を立てている。本は読んでいる方だと思うが、基本的には「読書は仕事の成果に繋がってこそ、意味がある」と考えている。

 改めて言うことでもないが、読書そのものは「仕事の成果」と認められないし、「知識を持っている」こと自体も、さほど価値はない。読書は、ビジネスの文脈の中での実行、更には業績にインパクトに繋がってこそ、価値がある。

 仕事で成果を出すための読書については、いくらか言っておきたいことがあるので、記しておく。特に強調したいのは、「読書は食事と同じ」という点と「虚栄心を捨てよ」という点だ。

 まず、基本的に読書は食事と同じで、体調や精神状態に合わせて、読む本を選ぶことが重要だ。いくら栄養価の高い食材であっても、その時、身体に合わなければ、むしろ有害になる。

 組織で働いて成果を出す上では、例えば「ブラック企業本」や「メンタルヘルス本」「リストラ本」などは、読むとリズムが崩れやすいテーマなので、要注意だ。

 「日本人必読の書」とか「ビジネスパーソン必読」みたいな物言いも、あまり間に受けない方が良い。

 他人から「こんな低レベルな本を読んでいるのか」と思われようと、仕事の成果に繋がるなら、迷わず読むべきだし、成果を出せば、その時点で「勝ち」だ。

 むしろ、ビジネスのヒントは、「下世話で低レベルな本」に含まれていることが多い

 また、読書を仕事の成果に繋げる上では、「頭が良いと思われたい」という虚栄心は、捨てる必要がある。「俺様の頭の良さを思い知れ」という感情は邪念であり、この邪念に囚われると、つい役に立たない「高尚な本」を選んでしまう。

 他人にアピールするために本を読むのは、実用上はやめた方がいい。

 そういう読書スタイルだと、性格も悪くなりやすい。実務家にとっては、読書によって性格が悪化したら、それだけで「大損」である。

 時代の風潮として、「読書は無条件に良いこと」とされがちだが、この点は肝に命じた方が良いと思う。

 僕は何も、「正しい読書術」を語っているわけではない。読書を「仕事で成果を出すための手段」とするのは、むしろ邪道だろう。

 しかし、殆どの人にとっては、読書そのものよりも、「仕事で成果を出すこと」の方が、遥かに優先度が高いはずだ。「正しい読書術」を実践して路頭に迷うようでは、本末転倒もいいところだ。

 僕にとってもそうだし、生計がかかっている以上、それで当然なのだ。

 山田宏哉記



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2014.12.29 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ