ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3431)

 「火星行きの片道切符」を真剣に考える

 2013年、オランダの民間非営利団体・マーズワンが、火星への移住希望者を募集して話題になった。

 但し、この移住には「片道切符」という重要な条件がつく。つまり、二度と地球には戻って来られない。大袈裟に言えば、これまでの生活や人間関係を全て捨てて旅立つ必要がある。

 果たして、あなたはどう思うだろうか。

 この「火星行きの片道切符」の是非や妥当性について、真面目に考えてみたい。

 「火星行きの片道切符」については、僕はこれまでは比較的"常識派"だった。しかし、映画『インターステラー』を観て、少し視点が変わった。

 おそらく、普通の人にとっては、「火星行きの片道切符」は全く魅力のない話だろう。

 だから、「火星行きの片道切符」は、「刑罰として導入する」のであれば、社会通念上、理解が得られやすいとは思う。

 例えば、火星に刑務所を作って、犯罪の最高刑を「片道切符の火星送り」にすれば、死刑は廃止しても構わないと思う。

 凶悪犯罪者は、二度と地球に戻ってこれず、文字通り、地上から消える。これなら死刑存続派も、死刑廃止派も、納得できる話ではないだろうか。

 しかし、「火星行きの片道切符」を「懲罰」の話に矮小化してしまうのは、視野が狭いと僕は気付いた。

 人類が、これからも地球上に住み続けられる保証はない。異常気象などで人類全体を養う食料生産が不可能になるかもしれないし、文明崩壊をもたらす規模の隕石の衝突が起きるかもしれない。

 要するに将来、何が起きるかわからない。その時、人類が地球上だけで暮らしていれば、地球とともに人類も滅亡してしまうが、人類が他の星にも移住していれば、最悪、そのタイミングでの絶滅は免れることができる。

 もっとも、「人間は、人類という種のために行動できるか」という点は、映画『インターステラー』においても、核となる部分のひとつだ。

 「人類の一歩」を踏み出すために、残りの人生を捧げて地球以外の星に移住するのは、誰かがやらなければならないとは思う(僕は現時点では辞退したいが)。

 大航海時代の船乗りたちも、その当時においては、「片道切符」だったはずだ。生命を賭けて、冒険の旅に出る。

 もちろん、彼らのひとりひとりを突き動かした動機は、富や名誉、功名心などであったはずで、決して「人類全体のため」ではないだろう。

 しかし、結果的には、大航海時代の新大陸発見があったからこそ、その後の人類は劇的に豊かな生活を手にすることができたわけだ。

 少なくとも、自殺をするくらいなら、地球以外の星に片道切符で移住する方が、人類全体のためになると思う。嫌いな人とは二度と会わずに済み、しかも「人類の英雄」の名誉が手に入る。

 自分以外の誰かに期待してしまって恐縮だが、人類全体のことを考えるなら、片道であることを覚悟して、火星に乗り込む人は、やはり必要だと思う。

 ごく少数の開拓者が開拓した新世界が、人類全体を豊かにする。歴史を振り返れば、これこそ、人類が辿ってきた道であり、「火星行きの片道切符」もまた、その例外ではないのだ。

 山田宏哉記



【関連記事】
読書の肝はリズムと精神衛生にあり (2014.12.29)
「言い訳の達人」の正体 (2014.10.26)
今、"奴隷"たちに教えるべきこと (2014.10.26)
ドラッカーに学ぶ社内ニート対策(2014.10.13)
役立たずの"アイデアマン"に告ぐ (2014.10.13)
先輩が後輩をいじめる本当の理由 (2014.10.5)
人生の先輩曰く「俺様はこんな仕事をやる人間じゃない」 (2014.10.2)
「俺様語り」からの卒業(2014.9.27)
「下積み10年」は正しかった(2014.9.23)
なぜ、俺様社員は転落したのか(2014.9.15)
「意識が高い人」とは、どういうことか(2014.9.13)
"腐った世の中"と"愚かな一般大衆"を見下すあなたへ(2014.9.1)
僕たちが生まれた時、世界はもう完成していた(2014.8.16) "寛容"は、教育と訓練の賜物である(2014.8.10)
炎上に宿る"異様な情熱"の正体(2014.8.8)
チームワークに逃げるな(2014.8.2)
「仲間」と認められる人、認められない人(2014.7.26)
「今、解決すべき問題」と実務という試練(2014.7.3)
大物プロブロガーの失敗に学ぶ仕事術(2014.6.28)
大物プロブロガーは、「お荷物社員」だった(2014.6.27)
スポーツ観戦の本質と人生を諦めた一般大衆(2014.6.21)
傲慢と謙虚についての誤解(2014.6.16)
なぜ、「嫉妬」を「義憤」にすり替えるのか(2014.6.13)
「憧れの仕事」をする者の義務(2014.6.9)
「憧れの仕事」をする上での注意点(2014.6.7)
僕がNHKオンデマンドを解約した理由(2014.5.24)
今、「普通の働き方」を考える(2014.5.24)
決着:ネットショップVSリアル店舗(2014.5.18)
もし、世帯年収355万円で新築マンションを購入したら (2014.5.11)
東京に住むのは合理的な判断か (2014.5.10)
シェアハウスに住むのは合理的な判断か (2014.5.6)
情報弱者のための家電量販店 (2014.5.2)
大物プロブロガーの誤算と敗因 (2014.3.22)
コストとリターンで学ぶ商売の基本 (2014.3.15)
自慢話をするなら、"迷惑料"を払うべし (2014.3.14)
大物プロブロガーが本当に伝えたいたった1つのこと (2014.3.4)
時間を売るポジションと人材マーケットの論理(2014.3.1)
有料メルマガにみるドヤ顔ノマドの限界(2014.2.24)
「雇用のミスマッチ」を考える(2014.2.22)
「勝ちが勝ちを呼ぶ、負けが負けを呼ぶ」という構造(2014.2.20)
なぜ、会議に貢献できないのか(2014.2.13)
出張で成果を出す(2014.2.10)
プロジェクトで成果を出す(2014.1.25)
長時間残業が減らない本当の理由(2014.1.11)
仕事がなくて暇な会社員(2013.6.30)
「上司に相談します」が口癖の担当者(2014.2.1)
個人主義者は会社勤めできるか(2014.1.26)
日雇い派遣に学ぶプロジェクトの本質(2014.1.18)
誰が"面倒な雑用"をするべきか(2013.12.30)
タクシーに未来はあるか -業界復活の切り札-(2013.12.21)
TV電話が普及しない本当の理由(2013.12.7)
就職活動の勝敗は10歳の頃に決まっている(2013.10.25)
『ちびまる子ちゃん』で学ぶ「教室内カースト」(2013.10.20)
なぜ、日本人の7割には中学レベルの知識もないのか(2013.9.22)
勤労の美徳と資本主義の強欲 (2013.9.21)
ウェブへの上場と不特定多数による評価 (2013.9.16)
仕掛けと手仕舞いの仕事論 (2013.8.31)
"この世にいらない人間"と動物的本能の暴走 (2013.8.20)
人間的魅力の効用と限界 (2013.7.28)
勤勉という美徳の終わり(2013.6.30)
勉強で得られる知識は、価値が低い(2013.6.22)
仕事が好きな人、嫌いな人(2013.6.1)
仕事に"専門的な知識と能力"は必要か(2013.4.27)
ビジネスでは、あまり努力しない方が良い理由(2013.4.20)
誰が「腐った人材」を養うのか(2013.4.13)
「パンを分け合う仲間」としての会社(2013.3.30)
なぜ、あの人は「本を読むバカ」なのか(2013.3.26)
「やればできる」の仕事論(2013.3.23)
なぜ、ユニクロの離職率は高いのか(2013.3.16)
若者よ、貯金は止めた方が良い(2013.3.12)
英語公用語化の真意(2013.3.9)
薄給の時代 、副業の損得勘定(2013.3.2)
株で勝つのが難しい理由 (2013.3.2)
残業を良しとする"村の論理" (2013.2.24)
お金を稼ぐ力、組織を泳ぐ力(2013.2.16)
「みんな」という名の不審人物(2013.2.9)
リスクヘッジとしての株式投資(2013.2.2)
勤労の国の幸福なサラリーマンたち (2013.1.27)
公務員の"駆け込み退職"騒動の本質(2013.1.26)
株式投資の「究極の目標」とは何か(2013.1.23)
シャープ株の売買で気付いたこと(2013.1.17)
"試練の場"としての株式投資(2013.1.14)
中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』覚書(2013.1.4)
読書の費用を回収できるか(2013.1.4)
いかに「読むべき本」を確保するか(2013.1.4)
"紙本主義"の終わりとアマゾンのキンドル生態圏(2013.1.1)
信仰告白のビジネスモデル (2012.12.29)
iPhoneの防水ケースと家電量販店の終わり(2012.12.26)
なぜ、デートでサイゼリヤに行ってはいけないのか?
(2012.12.22)
ペニーオークション詐欺の教訓(2012.12.22)
汗で稼いだ一万円、投資で稼いだ一万円(2012.12.19)
実務に活かす株式投資(2012.12.15)
アウトソーシング時代の働き方(2012.12.8)
「飽きないこと」を仕事にする(2012.12.2)
ビジネスに活かす優先的選択(2012.11.27)
もしも世界が男女10人ずつの高校の教室だったら
(2012.11.25)
"ホームレス転落"という悪夢 (2012.11.24)
映画『シルク・ドゥ・ソレイユ』に学ぶ人材配置 (2012.11.18)
シュートを打つ人、パスに逃げる人 (2012.11.17)
若さゆえの飢餓感 (2012.11.17)
動物王国としての実社会 (2012.11.11)
人生を語る不誠実さ (2012.11.11)
映画『009 RE:CYBORG』覚書(2012.11.4)
なぜ、経歴を詐称するのか(2012.11.3)
愛は地球を救えない(2012.10.24)
労働貧困層と生活保護(2012.10.22)
ルサンチマンのある人生(2012.10.18)
世界は"不本意な職業"で溢れている(2012.10.15)
不本意な職業を受け入れる(2012.10.13)
僕たちは「格差社会」を望んだ(2012.9.24)
「人間好き」のファシズム (2012.9.17)
強者はデモに参加するか(2012.9.15)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)

2015.1.3 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ