ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3435)

 生死を振り分ける「究極の人事権」

 実生活でこんな話をする機会があった。

「人質となった方の人柄や人格を論評して、『自己責任だ』とか『救うべき』とか判断するのは、慎むべきことだ。あなたは『この世に必要な人間』と『この世にいらない人間』を振り分けて、選別することができるほど、立派で偉い人間なのか。要はそういうことだ。」

 生命の危機に瀕した人質の被害者に対して、「自業自得」とか「自己責任」と言う人は、本音では被害者が「この世にいらない人間」だと判断しているわけだ。

 一般に、部下や子分、家来などに賞罰を与える権利のことを「人事権」と呼ぶ。この「人事権」は、人間組織において、権力の源泉であると同時に、麻薬のようなもので、行使する側には強い自制心が求められる。

 現代の一般企業においては、賞罰の罰の方は、最高でも懲戒解雇であり、生命までは取られない。

 一方、歴史を振り返れば、「切腹を命じる」とか「断頭台で斬首刑」のように、人事権で人間の生命も奪うこともできた。

 自分の判断で「この世に必要な人間」と「この世にいらない人間」を振り分けられたなら、それは「究極のエンターテイメント」だと感じないだろうか。 

 歴史上の暴君が暴君たる所以は、人事権を濫用し、「人の生死をもてあそぶ快楽」に取り憑かれたが故でもある。

 現代でも、この魅力に取り憑かれた連中は、独裁国家で国民を好き放題殺して、世界に悪名を轟かせている。

 裁判員制度において、従来は死刑判決が出ないレベルの罪状に、裁判員たちが死刑判決を出すケースが頻発しているという話がある。裁判員の中にも、合法的に「人を殺す権利」を行使したくて、ウズウズしている連中が相当数いるのだろう。

 本音では「気に食わない奴は、問答無用で死刑にしたい」と感じている人は案外いるもので、そういう人が権力を握るとロクでもないことになる。

 生命に関わる問題ではなかったが、僕自身も人事権を行使されて、結構、痛い目にあったことがある。

 人事権については、僕は被害に遭う側だったが、だからこそ、「気に食わない人間を、虫ケラみたいに踏み潰すのは、さぞ気持ちいいだろうな」と感じたものだ。

 山田宏哉記



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