ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3439)

  他人の不幸を嘲笑する自己責任論

 「他人の不幸は蜜の味」という格言がある。

 確かに、世の中には「いい気味だ」「ざまあみろ」と感じる出来事がある。このような心理状態を指して「溜飲が下がる」と言ったりする。

 例えば、人気絶頂にあった芸能人が、人気を落とし、自暴自棄になり、麻薬に手を出して、逮捕されたりする。

 あるいは「金で買えないものはない」と豪語していた経営者の会社が倒産し、ホームレス同然になる。

 僕たちは、本音の部分では、こういう"転落物語"が大好きだ。気に食わない奴が、失敗して落ちぶれれば、飯もうまい。だからこそ、週刊誌やワイドショーは、「他人の不幸」を中心に扱うわけだ。

 他人の不幸を喜ぶことが、悪いとは言わない。これは動物の本能に近いものだからだ。

 しかし、だからこそ、守るべきことがある。それは、ダークサイドの感情を「正義のフリで誤魔化さない」ということだ。

 僕が 嫌いな言葉のひとつに「自己責任」がある。「自己責任」とは、「ざまあみろ」「いい気味だ」の婉曲表現だ。

 よくよく吟味すると、人が「自己責任」という言葉を使う時、「ざまあみろ」と「いい気味だ」と置き換えることが可能だ。

 「生活保護で困窮するのは、自己責任(=ざまあみろ)」「勝手に危険な国に行って人質になるのは、自己責任(=いい気味だ)」。

 「自己責任」という言葉の裏にあるのは、他人の不幸を嘲笑する感情に他ならない。

 そう、他人の不幸を嘲笑したい時、最も便利な言葉が「自己責任」なのだ。何か倫理的に高尚なことを言っているように見えるが、要は「他人の不幸で飯がうまい」だけのことだ。

 他人の不幸を公然と嘲笑するのはさすがに気が引けるため、「それは自己責任、ウケケケケ」と婉曲表現をする。これを卑怯と呼ばずに、何を卑怯と呼ぶのか。

 他人の不幸を喜ぶのは、構わない。しかし、善人のフリをして、他人の不幸を嘲笑するのは許せない。他人の不幸を喜ぶ自分自身の感情を誤魔化すな。

 人間として守るべき最低限のラインを考えた時、僕が言いたいことは「『自己責任』などという言葉で、他人の不幸を喜ぶ自分自身の感情を誤魔化すな」という一点に尽きる。

 山田宏哉記



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