ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3440)

 仕事の目的は「猿山のボスになること」なのか

 政治を批判する時に、よく「政策より政局」という言葉が使われる。

 僕は、「政策より政局」を批判する言葉を聞く度に、苦々しい気持ちになる。何も、政治家を擁護したいがためではない。自分のことを棚に上げる品性が気に食わないのだ。

 「政策より政局」は、企業の文脈で言えば、「事業より人事」になる。事業展開や顧客への貢献より、内輪の人事への関心が強いのは、衰亡期に入った企業でありがちなことではないか。

 何かを成し遂げることより、自分自身の権益拡大を優先することが、悪いとは言わない。僕も、他人に何かを要求するほど、立派な人間ではない。だから、悪いとは言わないが、少なくとも、自分にできないことを、他人に要求するのは卑怯だ。

 「政治家は権力闘争と私腹を肥やすことにしか関心がなく、全然国民のことを考えていない」と批判するのは結構だが、そういう自分はどうなのか。

 やはり、「猿山のボスになること」にしか関心がないのではないだろうか。

 もし、自分の主要な関心が「事業より人事」のビジネスパーソンならば、「政策より政局」の政治を批判する資格はない。

 本音レベルで「会社の業績や顧客満足などどうでもいい。大事なのは、俺様の肩書きと年収だけだ」と考えるのは、悪いことではないと思う。

 若者が起業する真の目的は、多くの場合、「猿山のボスになるため」だろう。耳障りの良い言葉で言えば、「一国一城の主になるため」。本音の部分では、事業や顧客のことなど、どうでもいいと思っているわけだ。

 もちろん、自分の地位や給料にしか関心がないのが、悪いとは言わない。むしろ、それが普通かもしれない。

 「猿山のボスになる!」と決意して、権力闘争と権益拡大に邁進するのは結構だが、それでも、本音の部分で、事業や顧客を「どうでもいい」と考えるのは、やはりビジネスパーソン失格だと僕は考えている。

 自分の権益拡大にしか興味がない人は、すぐにわかる。少なくとも、僕にはすぐにわかる。

 ビジネスパーソンにとって「自分自身の権益拡大より、事業や成果そのものに集中できるか」は、ひとつの試金石で、これをクリアできないと、卓越した成果を出すのは難しい。

 僕自身は、最近ようやく、この壁を突破できた。この壁を突破するのは相当難しく、万人に要求できることではないと考えている。

 自分自身の「生き残り」と「権益拡大」だけに集中するのは、動物の本能に照らせば「正解」だろう。実際、多くのビジネスパーソンにとって、「雇用の維持」は最優先事項のはずだ。

 確かに、仕事をする上で「猿山での戦い」を避けて通ることはできないかもしれない。しかし、それだけでいいのか。

 仕事をするのは、あくまで、世の中のために何かを成し遂げるためであり、決して「猿山のボスになる」ことが目的ではないだろう。

 随分と長い時間がかかったが、僕はようやく、建前ではなく、本音でこう言えるようになった。

 山田宏哉記



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