ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3444)

 スキルから考える給料と公平性

 世間一般では、どうにも「単純労働は給料が安い。高度な知識とスキルが必要な仕事は給料が高い」と思われている節がある。

 確かに、同じ職種に限定して考えれば、要求されるスキルが高くなるにつれ、給料も高くなる傾向はある。

 しかし、職種をまたいで比較するとなると、この認識は「間違っている」と思う。

 なぜなら、肝になるのは、その「労働条件で人が集まるのか」という点だからだ。

 私見では、低いスキルでできる仕事ほど、割高な給料でないと人が集まらず、高いスキルが必要な仕事ほど、割安な給料でも人が集まる。

 多くの日本人は、その教育水準にふさわしい職業・職務に就くことができない。

 本音では「一生懸命勉強して、大学まで出て、この仕事内容かよ」と不満を持っている人は、少なからずいる。だから、「低スキルでできる職業」は、逆に高めの給料を払わないと、人が集まらないのだ。

 仕事の報酬には、「経験」や「やりがい」も含まれている。

 例えば、駐車場の見張り番と高度な研究調査が、共に時給¥1,000だとすれば、高度な研究調査の方が「条件が良い」と言える。駐車場の見張り番の時給を¥1,500に上げても、人が集まるのは、おそらく研究調査の方だろう。

 例えば、「何のスキルも蓄積できない仕事」を20年続けて解雇されたら、もはや「社会復帰」は絶望的だろう。「人生の補償」という意味でも、「スキルを蓄積できない仕事」には、逆に高い給料を支払う必要があると思う。

 また、キャバクラ嬢などの水商売は、必ずしも高いスキルが要求されるわけではないだろうが、時給は高めだ。水商売などは「経験したことが、人生や自分の評価に悪影響を与える」という側面があり、その分、高い給料を払わないと、人が集まらない。

 パチンコ店の店員なども、求められるスキルと比べて、給料は高めに見える。堂々と他人に言いづらい(と一般的に考えられている)仕事は、その分、給料も高くなる傾向がある。

 今では良い経験だと思っているが、僕は学生時代、毎朝、百貨店の床をモップや雑巾で磨いていた。当時、「これまで一生懸命勉強してきて、この仕事かよ!」という気持ちがなかったと言えば、やはり嘘になる。

 お金で解決する問題ではないが、そういう不遇感を持った人に、せめて少し高めの給料を払うのは、実は大切なことだ。

 程度の差はあれ、誰しも「給料が安くても、好きなことを仕事にしたい」とか「他人に誇れる仕事をしたい」と思っている。

 だから、そういう仕事の給料は、下落する傾向がある。その一方、「不本意な仕事」は高めの給料を払わないと、人が集まらない。そして僕は、この構造を公平だと考えている。

 人気があるクリエイターやお笑い芸人、スポーツ選手などの職業よりも、飛び込み営業や借金の督促、介護の現場作業員などの職業の方が、「求人枠」が大きいことも明らかだ。多くの若者には、前者の夢を諦め、後者の現実と折り合わせるプロセスが必要になる。

 もしかすると、アニメ制作よりも、公衆トイレの清掃の方が、遥かにやりがいがあるかもしれない。それは大いにありえることだ。確かにそうなのだが、それは実際に仕事をしてみないとわからない。

 人生、「何事も経験」であり、下積み時代や修行時代の仕事は、決して無駄にはならない。また、どんな仕事であれ、真剣に打ち込めば、その中にやりがいは見つかるものだ。

 確かにそうなのだが、それは事後的に気付くもので、仕事を探す段階では、大抵、わからない。そして人は、仕事を経験する前に、まず仕事を選ばなければならない。

 だからこそ、世の中全体を考えると、「低収入だけど、人気がある仕事」と「人気はないが、高収入の仕事」に大きく二分された方が、公平性を担保できると僕は考えている。

 山田宏哉記



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