ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3449)

 他人を過小評価する病

 僕自身もまさに当事者だが、自分のことを過大評価するのは、あまり望ましいことではない。自己評価が過大な人を見ると滑稽なのに、自分自身に対しては、つい無自覚に甘くなってしまう。

 但し、それ以上に深刻なのが、他人を過小評価することだ。僕たちは大抵、「他人の欠点を見付ける専門家」だ。

 確かに、他人の欠点はよく見える。悪口のひとつも言いたくなる。しかし、だからこそ、僕は「自分のことを棚に上げて、ものを言ってはいけない」と考えている。

 電車で席を譲ったり、道で迷った様子の人に声を掛ける程度のことでも、いざ自分でやるとなると、かなり難しい。他人の不親切を目にしたとしても、安易に悪く言うべきではない。ごく身近な親切であっても、「言うは易し、行うは難し」なのだ。

 なお、「努力を評価して欲しい」と言う背景には、「自分は物凄く努力しているのに、他人は棚から牡丹餅で成果を出している」という信念がある。率直に言って、この手の信念は間違っている。むしろ、「他人の舞台裏」を想像できないことを恥じるべきだ。

 例えば、「リア充」を見て、世の中が不平等だと嘆くのは、根本的に間違っていると思う。「リア充」を批判する人は、恵まれた立場にいる人間が、「棚から牡丹餅で果実を手にした」と勝手に決め付けている。

 現在、イチャイチャしている恋人たちだって、舞台裏では、勇気を出して告白なりをしてきたわけだ。

 そもそも、他人の成果を「実力ではなく、棚から牡丹餅」だと決め付けるのは、とても失礼なことだ。舞台裏では、他の誰よりも研鑽を積んでいるかもしれないのに。上手くやった人を妬む気持ちは理解できるが、ここは「人間の理性」を発揮すべき局面だ。

 「他人の舞台裏」にも思いを致し、見えない努力と研鑽を讃えるようにしたい。

 逆に、自分のことについては、「あれほど手間と時間をかけて、全力を尽くしたのに」などと考えてはいけないと思う。上手くいったら、「運が良かった」、失敗したら「実力不足」で片付けたい。

 あなたは自分が、『ドラえもん』ののび太より、評価に値する人物だと思うだろうか。僕は以前、「のび太より自分の方が優秀」と思っていたが、考えを改めた。恥ずかしながら、僕はのび太を過小評価していた。

 冷静に評価すれば、『ドラえもん』ののび太は、僕よりも立派な人物と断言できる。それは、しずかちゃんのパパの台詞に端的に現れている。

 「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。それがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね。」(『のび太の結婚前夜』)。

 僕たちは、「自分の舞台裏」を知っている。何かを成し遂げるために、どれだけの手間と時間をかけたかを知っている。しかし、「他人の舞台裏」は見えない。運良く、「棚から牡丹餅」で果実を手にしてように見えてしまう。

 自分でも嫌な奴だと思うが、以前、「あの件は、棚から牡丹餅ですよ」と謙遜して言ったら、本当に「棚から牡丹餅」だと受け止められて、内心、ガックリきたことがあった。実は、裏では、凄いプレッシャーと難しい判断があったのだが。

 とはいえ、僕だって他人が上手くやったら、条件反射的に「どうせ、棚から牡丹餅だろう」と感じてしまう。我ながら、つくづく身勝手だ。だからこそ、常に謙虚であることを心掛け、「自分に厳しく、他人に優しく」を肝に命じる必要がある。

 山田宏哉記



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2015.3.19 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ