ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3470)

 「仕事ができる人」を目指さない

 先日、知人と意見交換をしていて、「もはや、スキルアップの時代ではない」ということで、認識が一致した。

 「スキルアップをして、『仕事ができる人』になろう」という考えは、世間体や虚栄心を優先する枠組みであり、生死を争うビジネスの現場では、役立たない。

 武士はおそらく、真剣勝負の場で「必殺技」を使わなかった。必殺技が必要なのは、「演技」の世界の話であり、道場で仲間に「俺様の凄さ」をアピールする時だ。

 例えば、フルコンタクト空手の世界では、「上段回し蹴り」が花形技だ。上段回し蹴りが綺麗にできれば、道場でも「空手ができる」と評価されるはずだ。

 しかし、路上でチンピラに刃物を突き付けられた時、上段回し蹴りを使うのは、自殺行為に近い。道場と実戦は違う。こういう時は、「逃げるが勝ち」だ。

 会社でクビになりやすいのは、実績がない人が、実績を出そうとして焦り、余計なトラブルを起こした時だ。これは『悪いダメ社員』の行動パターンでもある。

 実績がない時は、おとなしくして、トラブルを起こさないように注意するのが、生き残る知恵だ。

 ある仕事をしていた時、僕は半年でクビになった(解雇まではされなかった)。その原因は、「成果を出そうとして、焦ったから」だ。

 だから、余計なトラブルを起こしてしまった。そんなことが重なり、僕はクビになった。やる気は人一倍あったが、だからこそ、僕は「悪いダメ社員」だった。

 会社の中には、確かに、明確な成果を出しにくい職務も存在する。そういう職につくと、どうしても「早く成果を出さなくては」と焦る気持ちがのし掛かってくる。

 これは大きな落とし穴で、ここで成果を焦ってトラブルを起こすと、クビになる危険が一気に高まる。僕も、これで失敗した。

 当時、僕は「仕事ができる人」を目指していた。スキルアップにも精を出し、資格も取得した。生死がかかった闘争の場で、「仕事ができる人」を目指したり、スキルアップに励むのは、とんでもない感違いなのだが、僕はそんなことにも気付けなかった。

 結論めいたことを言えば、仕事ができるようになったり、スキルアップすることより、ポジショニング(位置取り、場所取り)の方が、遥かに重要だ。

 ポジショニングが良ければ、少ない労力で、大きな成果が出る。サッカーで言えば、ボールを追いかけるのではなく、ボールが飛んで来る場所に立つ。

 生死を分かつ闘争の場では、ポジショニングが最も重要だ。治安の悪い場所には近付かないのと同様、筋の悪い職務や案件には近付かない。危険を察知したら、まずは生き残ることを最優先で考える。

 スキルアップなどは、あくまで「安全が保障された、道場の中での話」なのだ。

 僕は、自他共に認めるダメ社員なのだが、幸い、好きなことを仕事にして、飯を食えている。大したスキルも持っていないのだが、ポジショニングだけは良かったという自負がある。

 そして、一生懸命、「スキルアップ」に励んで、クビになっていく人を見るにつけ、つくづく「平均的な能力の人が、『仕事ができる人』を目指すのは、実は間違っているなぁ」と感じているわけだ。

 山田宏哉記



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