ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3482)

 「無知な作業者」の原理 

 この度、「無知な作業者」の原理を考案したので、この場で提唱させていただきたい。

1.定義
 明示的な指示以外、一切しない人を「無知な作業者」と定義する。

2.職務
 「無知な作業者」は、「誰にでもできる簡単な仕事」に従事する。

3.報酬
 「無知な作業者」の賃金は、その時代の最低賃金に向かって収束する。

 そして、上記項目から、以下の結論を導き出せる。

1.「無知な作業者」は雇用の調整弁であり、代替可能な存在である。

2.「無知な作業者」の賃金が最低賃金より高い場合、それは「企業の温情」に基づいている。 

3.「無知な作業者」が感情任せに転職すると、最低賃金でしか雇用されない。

 わかりやすい例を挙げて、説明したい。

 例えば、タクシーに乗った時、運転手が「無知な作業者」だとどうなるか。

 運転手はお客さんに言う。「道順を指示してください」と。お客さんは「うわぁ、失敗した」と後悔する。だが、「無知な作業者」の運転手は、自分の何が悪いのか理解せず、「道順をキチンと指示しないお客が悪い」と考える。

 お客の立場で言えば、「逐一、道順を指示してくれ」というタクシーは、当然ながら、「大外れ」だ。タクシーに乗るのは「時間を買っている」わけで、逐一、道順の指示をしていたら、時間を買ったことにならない。

 新人は、「無知な作業者」として、会社組織に入ることになる。最初は、コピーを取ったり、後片付けをしたりと、「無知な作業者」として、周辺的に事業を支援する。そして、「無知な作業者」である限り、一定以上の評価は得られない。

 だから、「無知な作業者」からの脱却が、まず必要になる。

 「無知な作業者」が、汗水垂らして、一生懸命、作業をしている。それは、とても尊いことで、十分に賞賛に値する。但し、商品の設計や開発など、事業の中核で、付加価値の高い仕事をする人と比べれば、相対的な評価は低くなる。この構造に気付かず、感情的に会社を辞めるのはもったいないことだ。

 汗水垂らして働く「無知な作業者」が、サボっているように見える商品の企画担当者より、給料もボーナスも低い。このことに「理不尽さ」を感じるのは尤もだが、会社に貢献した付加価値で見れば、この評価は妥当だ。

 年収が200万円以上なら、むしろ「無知な作業者」は経済合理性より多くの報酬を手にしており、喜ぶべきなのだ。

 ちなみに、僕が自分なりに、時給\1,000の「無知な作業者」から脱却できたという手応えを掴んだ時、実社会で働き始めてから、既に7年が経っていた。「下積み10年」という言葉があるが、泥まみれの7年を経て、ようやく「無知な作業者」から脱却できた(と、勝手に自己評価している)。

 いずれにせよ、この「無知な作業者」の原理を用いると、企業で働く人が抱える曖昧な不満を、結構、説明できるのではないかと僕は考えている。

 山田宏哉記



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2015.11.15  記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ