ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3488)

 成人式で暴れる"負け組"の怒りと絶望

 成人式で暴れる若者たちについて、実生活で話をする機会があった。

 「成人式で元不良少年たちが派手な格好をして暴れたりするのは、既に現実世界での"敗北"が確定しているために、その怒りを発散しているのではないか、と思う。"敗北"が確定した彼らにとっての"最後の晴れ舞台"。そう思えば、多少は寛容になってもいいんじゃまいか。」

 「今の日本では、20歳の時点で、"勝ち組"と"負け組"が確定し、自分たちは将来、ブラック企業で馬車馬のように働くしかない。成人式なんて、ちっともめでたくない。それをめでたいかのように言う、大人たちの欺瞞。彼らの感情を代弁すると、こういうことじゃまいか。」

 改めて考えると、大抵、学校教師は成績優秀者で、民間企業で働いた経験もない。薄給激務のブラック企業で働く辛さもわからない(学校教師の処遇は恵まれている)。

 だから、20歳の時点で「人生の負け組」が確定した不良少年たちの絶望と怒りを、たぶんリアルには理解できないと思うわけだ。

 「20歳の時点で、既に決着が付いている」というのは、シニカルに過ぎるが、大雑把に見て、将来、高収入を手にするであろう層と、低収入に甘んじるであろう層には、分かれている。10代の頃、どれだけ真剣に生き、どれだけ脳に負荷をかけて鍛えたかは、将来の収入格差に直結する。

 この資本主義の世界においては、就職後に「得意な仕事」や「適職」を探すのでは、ちょっと遅いのではないか、と個人的には感じる。僕も、社会人になる遥か前の、18歳の頃からしていたことを中核にして、今、飯を食っている。「18歳の頃からの圧倒的蓄積」が今のパフォーマンスを支えている。

 ビジネスの競争が、社会人になった瞬間から、「ヨーイ、ドン!」で始まると思ったら大間違いで、実はその時点で、既に逆転不可能なほど、実力差が付いていることが多い。フライングスタートを切った人も、その後、相当の研鑽を積むわけで、実力で追い抜くのには、相当の困難が伴う。

 残念ながら、10代の頃、勉強も部活動も真剣にやらず、飲酒喫煙やバイクの運転に現を抜かしていた少年少女は、残念ながら、将来、低所得に甘んじる可能性が高い。これでは、10代を真剣に生き、自己研鑽に励んだ人には勝てないし(圧倒的な能力差になる)、その後、逆転するのは極めて難しい。

 困難な課題を前にした時、どれだけ全力を発揮して、挑戦し、目標を達成することができるか。これは、仕事をする上で、最も重要な資質だ。10代の頃、勉強であれ、部活動であれ、困難な課題から逃げる癖をつけていると、いざ社会人になっても、どうしても「逃げ癖」が出て、言い訳をしてしまう。

 プロのオーケストラの劇団員が、その職種に就くため、幼い頃から研鑽を積んでいることは、誰しも理解している。スポーツ選手も同様だ。企業内で人気のある職種についても、就職の遥か前から、競争が始まっている。20歳の時点で、成人式で暴れているような人が、そういう職に就くのは、正直、殆ど無理だ。

 「なぜ、彼らは成人式で暴れるんでしょうね」などとしたり顔で語る、マスコミ関係者や学校教師。本気でそう言っているなら、人間心理とこの資本主義の世の中への洞察が甘いのではないか。

 殊更、不良少年たちの肩を持つ気はないが、僕から見れば、あれが「"負け組"の怒り」であることは明らかだ。

 山田宏哉記



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2016.1.10  記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ