ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3493)

 「明日はわが身」の人員削減論 

 某家電メーカーの元社員が、再就職で苦労している様子が報じられていた。

 ハローワークで「今までの年収を維持したい」と希望を言うも、「紹介できる職はありません」と言われるとか。

 以下、人員削減の対象者に対して、非常に厳しい見解を示します。

 これは、あくまで「明日はわが身」故の「自戒の念」でして、特定の知人や実生活で関わりがある方に対して、コメントをしているわけではありません。その点だけ、ご留意ください。

 物凄くシビアな話になるが、人員削減の対象になった人は、「時給\1,000の単純労働者として、イチから出直せ」というのが、現実的な話だと思います。余計なプライドがあると、次の仕事も見つからない。もっと言うと、そういう余計なプライドがあるから、クビになるのではないだろうか。

 人員削減の対象になった人が、「今までの経験を活かしたい」とか「これまでの年収を維持したい」などと贅沢を言うのは、基本的に「論外」だ。甘い、甘い、甘い!幸運に恵まれれば、そういうケースもあるが、基本的には、時給\1,000、年収200万円の単純労働者を覚悟した方が良い。

 僕もアルバイトでは、クビになった経験が3回ある。当時、一人暮らしで、自力で生活費を稼いでいたので、クビになるのは死活問題で、掃除屋や日雇い労働で、日銭を稼いだものだ。

 日本企業で人員削減の対象になるのは、厳しく言えば、「給料未満の仕事しかしていないローパフォーマー」と評価されたからである。「会社業績が厳しく…」というのは、あくまで本人の自尊心を傷付けないための方便に過ぎない。まずは、この「敗北」を率直に受け止める必要がある。

 部署の消滅や工場の閉鎖で、職を失うことになるケースにしても、一見、「不可抗力」に見えるが、消滅する部署や工場の中には、おそらく特筆すべきハイパフォーマーはいないはずだ。

 つまり、厳密に言うと、そういう場所に配置された時点であれなわけで、これは「不可抗力」ではない。

 例えば、年収が500万円の社員がいるとして、社会保険などの会社負担分を含むと、人件費として、ザッと750万円くらいかかっている。だから、その社員が自分の雇用を正当化するには、粗利換算で年750万円分以上稼ぐか、コスト圧縮で750万円分以上貢献するか、どちらかが必要だ。

 「年収500万円の社員なら、粗利換算で年750万円以上稼いでいるか」と問うと(営業職はもっとハードルが高い)、下を向いてしまう人が多いと思う。それもそのはずで、組織の稼ぎの大半は大抵、一部のハイパフォーマーが生み出している。平均的な人材は、自身の人件費を正当化できないのだ。

 自分の人件費を正当化できないのは、むしろ普通のことで、殊更、恥じることでも、悪いことでもない。ハイパフォーマーの仲間に養ってもらうことができるのは、組織で働くメリットでもある。ただ、その実力で会社を離れるなら、相応の待遇ダウンを覚悟する必要はある。

 大方の組織の実態は「2割のハイパフォーマーの成果が、残りの8割を養う」だと思う。それでも、そういうシビアな話をせず、「仲間だから」ということで、一緒に汗を流して働くのは、日本企業の美点だと思う。さりげなく仲間を養うのが、ハイパフォーマーのささやかな誇りなわけだ。

 だからこそ、明らかな低パフォーマーに対してであっても、会社で「給料泥棒」という言葉は、使うべきではない。厳しく査定すれば、8割の従業員は「給料泥棒」(=自身の人件費を正当化できない)だ。

 一部の人を給料泥棒呼ばわりして、「自分は違う」と考えるのは、倫理的に問題があるだけでなく、事実関係に照らしても、間違っている。

 更に言えば、「給料泥棒」という言葉を使いたがるのは、ハイパフォーマーではなく、平均以下の人のように感じる。折角、ハイパフォーマーが、仲間の人件費分まで稼ごうとしているのに、中途半端な実力の人が、自分の下を「給料泥棒」呼ばわりすると、雰囲気が悪くなる。これは、本当に止めて欲しい。

 僕も、今の勤務先をクビになったら、時給\1,000の掃除屋や日雇い労働者として、またイチからやり直すことになる。その覚悟は常に持っている。ただ、できればこれは避けたい。だからこそ、日々、成果には徹底的にこだわっている。

 余計なプライドを持っていても、良いことはない。大半の会社員にとっては、上司の靴を舐めてでも、会社にしがみついた方が良いものだし、それが嫌なら、時給¥1,000の掃除屋や日雇い労働者として、地面を這いつくばる必要がある。

 リアルな話をすれば、世の中、結構厳しいわけだ。

 山田宏哉記



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2016.2.15 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ