ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3504)

 消化試合をしていないか  

 「消化試合」という言葉がある。勝敗や順位が決した後に行われる試合で、選手にとっても、観客にとっても、緊迫感を欠くものになる。

 自戒の念を込めてだが、僕たちは気を付けないと、ビジネスにおいても、「消化試合として流す」という過ちをおかしやすい。

 2016年3月の終盤、僕はこんなことを感じていた。

「今、2015年度が終わろうとしている。2015年度の勝敗は、実質的には、既に決着している場合が多い。だがしかし、3月が終わっていない段階で、ついつい4月以降の新年度の方に意識がいくのは、ビジネスパーソンとして、甘過ぎる態度だ」と。

 僕が何を問題視しているか、ご理解いただけるだろうか。一事が万事なのだ。

 今日がまだ終わっていないのに、明日のことを考えてしまう。今年がまだ終わっていないのに、来年のことを考えてしまう。

 例えば、1週間というサイクルで見ると、金曜日の午後、まだ勤務時間中なのに、明らかに気持ちがだらけている人がいる。

 就業時刻になる前から、帰る準備をして、待ち構えている人もいる。仕事がなくて、暇なのだろう。こういう時、つい人間の本性が出る。

 今に集中していない。今を真剣に生きていない。だから、成長が遅いのだ。

 例えば、3月の中旬、「君にはもう、ホワイトカラーの仕事を任せることはできない。4月からは、地方の工場で製造ラインに立ってもらう」と会社に宣告されたとしよう。

 普通はショックを受けて、4月からのことで、頭が一杯になってしまう。しかし、それではダメなのだ。

 3月の中旬に、4月以降の左遷人事を宣告されたなら、まだ半月残っている。ここで全力を尽くすのだ。もちろん、今更頑張っても、左遷人事が覆る可能性は、ほぼない。だが、汚名返上に要する期間は、ここでの頑張りで違ってくる。

 あるいは、学校のクラスで、人間関係を築くのに、出遅れて、失敗してしまったとする。そして、レイムダックと化し、「来年のクラス替えの時は、失敗しないようにしよう」と決意する。

 ちょっと待って欲しい。なぜ今、この瞬間に、挽回しようとしないのか。

 「性格や行動を変えて、イメージチェンジをするなら、クラス替えのタイミングでしょ」というのが、小器用な生き方なのかもしれない。しかし、性格や行動を変えるべきだと考えるなら、それは今すぐ変えるべきだ。クラス替えのタイミングまで待っていては遅い。

 失敗したら、まだ試合の最中なのに、つい「次の試合では失敗しないようにしよう」と考えてしまう。しかも、それを立派な心掛けだと勘違いしている。

 学校の部活で、できない技術があったら、「後で練習しよう」と考える。勉強で理解できない点があったら、「後で復習しよう」と考える。パーティで上手く振る舞えなかったら、「後で対策しよう」と考える。

 全部ダメ。今すぐ、この瞬間に、できるようにすべきなのだ。競争に勝つことが目的ではないが、結果的に、これを徹底すれば、大抵の人との競争にも勝てる。

 今、この瞬間、この場で、全力を尽くすことこそが、何より大切なのだ。

 山田宏哉記



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2016.4.29 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ