ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3519)

 なぜ、あなたは希望の職に就けないのか?

 僕のみるところ、「希望の仕事ができない」という悩みを抱えている人は、非常に多い。もちろん、そういう人だって、努力を重ねていることだろう。

 しかし、肝心なことに、気付いていないことが多い。

 各々の職種や職業には、「求められる資質や能力」が存在する。例えば、ミュージシャンであれば、「演奏力」が必要であり、あるいはリーダーであれば、「謙虚さが必要」といった具合だ。

 目指す職種や職業がある人は、得てして「その職種や職業に求められる資質や能力」を磨くことで、希望の仕事に就ける確率を高めようとする。

 このアプローチは、必ずしも、間違っていない。
 間違ってはいないが、非常に大切なことを、見逃している。

 例えば、プロのミュージシャンやダンサーなどと比較して、
演奏や踊りのパフォーマンスそのものは、プロと大差ない人は、実はとてもたくさんいると思う。でも、彼らの大半は、プロになれない。

 それはなぜか。プロになるための選抜基準は、プロに求められるパフォーマンスと、別物だからだ。この違いに、気付いていない人が多いのだ。

 非常に単純な事実を指摘しよう。

 会社員には実務能力が求められる。一方で、企業に就職するのに必要なのは「採用面接を突破する力」だ。「実務能力」と「採用面接を突破する力」が同じかと言えば、ほとんどの人は「違う」と答えるだろう。要は、そういうことなのだ。

 クリエイティブ系の職種や職業に特に顕著だが、その職についた後に求められるのが、「洗練されたコンテンツをつくる力」だとしても、その職に就くために最も必要なのは「泥臭く自分を売り込む営業力」だったりする。

 この差異に鈍感だと、なかなか希望する仕事には就けない。

 リーダーへの抜擢なども、そうだ。既にリーダーになった人には、謙虚さが求められるが、これからリーダーに選ばれるためには、むしろ謙虚さとは正反対の「押しの強さ」が必要だったりする。

 実際、ジェフリー・フェファー氏も、『悪い奴ほど出世する』の中で、「さまざまな調査の結果ははっきりしている。ナルシスト型人間はリーダーに選ばれやすい」(P112-113)と指摘している。

 ひとつ、重要な教訓は、既にポジションについた人の真似をするのが、そのポジションにつくための近道とは限らないことだ。

 仮に、ポジションについた後には、「謙虚さ」や「協調性」が大切だとしても、椅子取りゲームを勝ち抜く段階では、むしろ、我の強さや押しの強さが重要になったりする。

 卑近な例では、結婚をしていない人が、結婚している人の真似をしても、結婚できないことが多いはずだ。「既に選ばれた人」は、性格が温厚の方が望ましい。しかし、「選ばれる前」の段階においては、むしろ我の強さや押しの強さが必要になる。

 つまり、希望のポジションに就き、活躍するためには、「椅子に座る前」と「椅子に座った後」の切り替えが肝なのだ。

 しかし、多くの人は、「椅子に座った後に求められる資質・能力」のことばかりを考えていて、別の基準で行われる「椅子に座る前」の選抜を突破できない。だから、希望の仕事に就けないのだ。

 要は、選ばれるために必要な資質と、選ばれた後に必要な資質は違う。

 ちなみに、この話、職場でするつもりはない。だから、この記事を読むことができた仕事仲間の方は、とてもラッキーなのでした。

 山田宏哉記



2017.5.1 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ