ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3524)

 落伍者の捨て台詞「優秀な奴ほど転職する!」

 「優秀な奴ほど転職する!」という趣旨の言葉を見聞きすることがある。また、世の中には転職を礼賛するかのような言説と広告が溢れている。

 それは、本当だろうか。

 僕は、人材育成の専門会社でのキャリアが10年で、自分の限界近くまで働いてきたつもりではある。「それで、その程度の実力かよ」と指摘されれば、その点は、素直に認めるしかない。

 ただ、転職を繰り返している人と比較して、成長角度が鈍かったと考えると、必ずしもそうではない気がするのだ。

 むしろ、「優秀な奴ほど転職する!」というのは、「落伍者の捨て台詞」と考えた方が、実態に即していると思います。

 カレン・ディロン(著)『社内政治マニュアル』の中に印象的なエピソードがある。

 「20代後半のとき、上司が新たなポジションをつくってくれたおかげで、組織でわたしよりも上の地位にいた2人の同僚を追い越して昇進することになりました。(略)2人の同僚のうち、ひとりは翌日に会社を辞めました。」(P167-168)。

 この後輩に追い抜かれた翌日に会社を辞めた人、きっと「優秀な奴ほど転職する!」と捨て台詞を吐いたでしょうね。

 また、他の条件が同じなら、中途採用の転職者よりも、新卒採用のプロパー社員を優先するのが、多くの日本企業だと感じます。最低限、転職後の昇進昇格が、プロパー社員より厳しくなる点は、覚悟が必要でしょう。

 ではなぜ、世の中には転職を礼賛するかのような言説と広告が溢れているのか。

 端的に言えば、ビジネスあるいは会社生活というのは、「大量の落伍者」を発生させるものだからです。落伍者には「リセット願望」があり、それが転職エージェントの利害と合致するのです。

 転職後の年収から3割とかを仲介料として得るのが、転職エージェントのビジネスモデルです。最初から「転職ありき」なのですね。

 正直に認めましょう。「同期に昇進で先を越された」とか「バカにしていた後輩が上司になった」とか、本当の転職動機とは、得てしてそういうものなのです。

 それを「キャリアアップのため」とか誤魔化して、自分のエゴを直視することを避けているから、ちっとも成長できないんですよ!

 山田宏哉記



2018.8.18 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ