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 伊勢丹回想録

 思えば、伊勢丹でアルバイトを始めたのは、生活上の必要に迫られたからでした。 去年の12月のことです。

 登録制の肉体労働では、全然、お金が足りないのです。 煩雑な手続き、拘束時間の長さ、明日の仕事があるかどうかもわからない。

 一回の飲み会で、他の人が食べきれないほど注文して、その日給が消えたりすると、殺意に近いものを感じました。

 独り暮らしを始めたのはいいけど、貯金は減っていく一方でした。 でも、せっかくつかみ取った独り暮らしを手放すわけにはいかない。 今、思い出しても、一番苦しい時期でした。

 そんな時、偶然、深夜のジョナサンで、求人雑誌「DOMO」で伊勢丹での掃除の仕事を見つけました。迷っている暇がないくらいに追い詰められていました。お金のことしか考えられなくなりかけていました。

 朝の7時から11時までを希望したけど、募集しているのは13時まででした。 「ちょっと長いな」と感じながらも、希望することにしました。 僕が、初めて面接で合格したのが、ここです。

 以来、体調が悪かろうが、1日も突発休をしないで、今日まで来ました。  少しだけ、余裕がでてきました。

 そろそろ、掃除の仕事からは、手を引き始めてもいいんじゃないかな。  そんな風に思います。  

山田宏哉記

P.S.百貨店より書店の方が、僕の将来につながっている。 それを思えば、大きな前進です。

2005.10.9

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