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 ギャラで仕事を選ばない

 映画の脚本家を目指している方と、話をする機会がありました。  彼の口から、こんな話が出ました。

 「多くの人が、ギャラ欲しさに、できそうにない仕事まで引き受けて、信用を失う。小さな仕事を積み上げて信用を勝ち得るにしても、小さい会社だと、約束を反故にして、ギャラを払わない場合も少なくない。」

 本当に自分がやりたい仕事があるにせよ、いきなりその道一筋では、やっていけない場合が多々あります。特に、芸術なり表現の世界は、常に需要より供給過剰です。

 ここで大切なことがあります。  それは、「まずは、自分の生きがいだけで生活しようとしない」ということです。

   生活費なり活動資金が底をつくと、お金欲しさに、どうしても嫌いな人間に頭を下げて、不本意な仕事を引き受ける必要に迫られます。

 特に、芸術志向の人は、作品製作より、営業活動に熱心になると、筆が荒(すさ)んでくるのです。それでも生活できずに、周囲の人から借金するようになると、もはや堕ちていく一方です。

   「アマチュアじゃ嫌だ。プロとして生活できなきゃ嫌だ。」という気持ちは、痛いほどわかりますが、表現の道一本で食べていけるかどうかは、実力以外に、運の要素も大きいわけです。

 だから、アマチュアとしてでもいいから、まずは手を抜かずに、作品と実力と実績を積むことです。

 特に、芸術表現の世界は、耐久戦です。  毎年、自らあきらめて去っていくものが大半です。  また、そういう人たちの言葉が、メディアに流れることもほとんどありません。

 そのためには、金銭面で、余裕を持っていた方がいい。  なぜなら、お金が足りないと、どうしてもお金のことばかり考えてしまうからです。  お金に余裕があれば、いい作品に仕上げることそのものに集中できます。

 だから、汗水たらして働くこと。  好きなことだけで生活できないなら、他の仕事で稼げばいいのです。  待遇条件を無視すれば、仕事はいくらでもあります。

 いずれ、華やかな世界で仕事をしたいなら、一方で、他人のやりたがらない厳しい仕事をした方がいい。その方が、人としてのバランスも取れます。  

山田宏哉記

P.S. と、僕が言ってもあまり説得力がないなぁ。

2005.12.30

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